ビジネス

2018.08.20

プロ経営者が明かす、意思決定の基準とは?

アルヒ代表取締役会長兼社長 浜田宏


マイケル・デルに気に入られて入社したデルでは、過酷な環境が待ち受けていた。業績への強いプレッシャーに加え、社内の競争環境も熾烈を極めた。日本法人トップ、本社バイスプレジデントになっても心の休まらない日が続いた。

「プレゼンをしくじっただけでクビが飛ぶ世界。僕も毎週のようにアメリカからの電話で怒鳴られてキツかった。でも、グローバルで、スピード感があり、チームを率いて働くのは充実感があった。自分が好きで得意なのはこれだと気づきました」

当時、デルのバイスプレジデントの平均在職期間は2〜3年。多くが結果を出せずにクビを切られるか、ストレスに耐えきれずに自ら去っていく。浜田はそこで6年間、日本法人トップを務めた。好きなことを貫くには力がいる。厳しい環境で成果を出して、どこでもやっていける力と自信、経済力を手にした浜田に、怖いものはなかった。

ARUHIの事業規模は、これまで手がけた会社に比べるとずっと小さい。物足りないのかと思いきや「ベンチャーみたいで、いままでで一番楽しい」とニヤリ。

「金融機関といっても銀行のように規制が厳しくないので、自由度は高い。当初は1つしかなかった商品も、いまは10に増やしました。メーカーだと企画から商品化まで年単位でかかるが、ここでは思いついたことを2カ月で商品化できる」

昨年12月からは、「家探し前クイック事前審査」をスタートした。5分程度の手続きでスマホやPCからローンの事前審査ができるサービスだ。最短で当日に借入可能額の概算がわかり、家探しの参考にできる。これも浜田と社員の小さな思いつきから生まれたサービスだ。

ARUHIは2017年12月、東証一部上場を果たした。上場すれば会社の公共性が増す。好きなことをやる足かせにならないのか。

「好きなことは一生懸命やるし、一生懸命やれば応援してくれる人も現れる。多くの世界の機関投資家たちが『従来の枠を壊してほしい』と期待してくれている。いまはやりたいことと期待されていることが一致していて、すごくハッピーですよ」


はまだ・ひろし◎1982年山下新日本汽船(現商船三井)入社。サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得後、コンサルティング会社を経て95年デル・コンピュータ入社。日本法人社長として実績をあげる。リヴァンプ、HOYA最高執行責任者を経て2015年から現職。59歳。

文=村上 敬 写真=間仲 宇

この記事は 「Forbes JAPAN 「全員幸せ」イノベーション」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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