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外部からの批判より目の前の真実

会社を立ち上げた当初は、他人から救われたことなんてほとんどありませんでした。大人には「あれは無理だ、これは無駄だ」と言われましたし、大学の先生にも「お前は研究を諦めた人間だ」と誹謗中傷された。何で僕はこの国を変えたいのか、みんなは何のために働いているのか。根本から疑ってしまうことも、何度もありました。

お金がなかったから、僕の食事はいつもチェーン店の牛丼でした。学内の食堂で食べることもありましたが、大抵は明け方まで研究をして翌日の仕事のために始発で一度家に帰っていた。そのときに食べるのが、一杯290円の牛丼です。一杯290円。その値段を見ると、どれだけお金がなくなっても牛丼なら食べていけると救われましたね。24歳から27歳までは、ずっとこんな生活です。

そんな中で僕を支えてくれたのは、やはり教育です。事業の売り上げがさっぱりな時でも、子どもたちは僕らの活動を楽しんでくれた。それにすごく救われました。周りからどれだけ文句を言われても、子どもたちは目をキラキラと輝かせている。もしかしたら、僕の恩師は子どもたちだったのかもしれませんね。

いまでもリバネスでは、新入社員が実験教室を担当しています。このサービスを受けてくれた人が、僕にとっての先生だからです。「お前らの先生は子どもたちだよ、教わってこい」って。リバネスのコアとなる価値観はそうやって育てています。

外部からの批判よりも、目の前のお客さんや子どもたちにとって少しでもプラスの影響になっていることを優先してやってきました。楽しんでくれている人にとって、外野のノイズは関係ありませんから。

永遠のプレイヤー、キング・カズを目指して

いつまでも自分自身がプレイヤーで在り続けたい。だから、若者に対しても、いつも「負けねーよ!」と思っています。でもやっぱりUNDER30とは感性大きく違う。だからこそ、彼らにずっと触れ続けていないとも思っているんです。

自分たちが古くなったからといって道を譲らずに、彼らから学べることを吸収しながら、彼らにも自分の持っているものを吸収してもらう。謙遜せずに「一緒にやろうぜ!」と言える、キング・カズ(三浦知良、プロサッカー選手)みたいな人を目指しています。

キング・カズはすごいですよね。若いチームから若いプレイを盗むだけじゃない。若いプレイヤーはみんな彼にメンタルを学ぶから、結果的に今でもみんなから尊敬されている。僕も若い研究者の邪魔をせずに、でもチャレンジャーとして一緒に戦っていきたい。

お互いに「悔しい、負けたくない」と「悔しい、でもありがとう」の両方を抱えて、世界変えていく。全員が仲間ですから、僕らは邪魔をせずに、でも簡単には抜かされないようにギリギリまで耐えていく。その方がお互い頑張れるし、きっと高く飛び上がれると思うんです。

UNDER30の発想は、もう僕には受け入れられない感性から生まれています。僕からしてみれば、漫画の世界を実現しようとしているように見えるんです。仮想と現実がごちゃ混ぜになっていて、嘘みたいなことを実現させてしまう。

僕にはフィクションにしか見えないアイデアも、彼らにとってはサイエンスで、リアルなんです。それは僕には実現できないことだから、投資します。それでも僕は、やっぱり彼らの邪魔にならない程度にはプレイヤーでありたいから、ちゃんと研究も続けている。

サイエンスの世界はあまりに進歩が早いから、とても自分一人ではやっていけません。だから次の世代を育成しないといけないんです。そのときに、僕は是非、みんなにキング・カズになって欲しい。僕はプレイヤーとして彼らと一緒に挑み、そして学んでいるんです。




丸 幸弘◎東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程修了、博士(農学)。大学院在学中に理工系学生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。

文=野口直希 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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