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2018.08.28 11:00

「アクティブライフ」という独自の着眼点でウェアラブルの急先鋒となった男

クリフ・ペンブル ガーミン・インターナショナルCEO

クリフ・ペンブル ガーミン・インターナショナルCEO

玄人好みのウェアラブルデバイスによってニッチ層を魅了し、独自の路線でウェアラブル市場を席巻するGARMIN(ガーミン)。その製品の魅力の神髄を探った。


フォーブス・アメリカ版による“Just100 2018:America’s Best Corporate Citizens”の製品品質評価において1位を飾ったのは、ガーミンだった。全米の主要上場企業1000社近くを対象にしたこの審査は、製品品質のほか顧客対応や従業員の待遇、環境への配慮などについてグローバルスタンダードとなる企業上位100社を選出したもの。

ガーミンの世界市場での2017年度の売り上げは約31億米ドル、営業利益は20パーセントを超え、GPS機器メーカー同業種の日系企業群を遥かに凌ぐ。ガーミンはいかにして世界中で選ばれる高品質な製品を生み出してきたのか、同社CEOのクリフ・ペンブル氏に話を訊いた。

創業期からエンジニア出身としてガーミンで働いてきた彼は、入社当時、まだ大学を卒業して数年しか経っていなかった。

「製品もなければ、オフィスすらない状態でしたが、自分のスキルを高めるとともに社会的にも大きな貢献ができる挑戦だと確信し、参画を決意しました」

航空機や船舶、あるいは車載用簡易型GPS端末(PND)のパイオニアとなり、GPS事業によって大きく成長を遂げてきた同社。しかし、アップルが「iPhone」を発売した07年以来、グーグルマップをカーナビゲーションとして使うドライバーが増加。ガーミンの車載用GPS端末の需要は自ずと下降し、売り上げは3年間で約10億米ドルも減少したという。

13年、そうした窮地のタイミングに、CEOに就任したペンブル氏はウェアラブルデバイスを自社の新たなコア事業に据えた。03年の時点でガーミン初のスマートウォッチがすでにリリースされていたものの、まだまだ小さな売り上げ規模に留まっていたウェアラブル事業。それでもテクノロジーの進歩や市場の動向を読み取り、果断かつ的確な方向転換を図った彼の選択は、のちに大きな成功へと結実する。

好調の背景にある2つの独自性

15年に日本を含む世界9カ国でアップルウォッチが発売されて以来、ウェアラブル端末は一気に認知度を上げ、普及が進んだ。アップルからの後継モデルだけでなく、ファッションブランドや時計ブランドからも種々の製品が発売され、今や、身に着けることで効果を発揮するコンピュータはいよいよ「みんなのもの」となりつつある。

同社はそもそも軍や専門機関を対象とするBtoB分野で求められる、高度な品質基準を満たす製品を数多く手がけてきた。その技術力を活かし、登山やサイクリング、ゴルフなどさまざまなアクティビティ向けのウェアラブル端末を開発。例えば視認性の高いカラーディスプレイや長時間持続するバッテリーなどで、本格志向の消費者のニーズを掴んできたのだ。

群雄割拠のウェアラブル市場における独自の立ち位置で注目を集めるガーミンの製品開発の秘訣に、ペンブル氏は「綿密なマーケティングと、自身の生活の一部としてアクティビティを愛している社員の情熱」を挙げる。

「我々の製品のほとんどすべては、社員が自分たちの生活から得たインスピレーションを起点としています。トレッキングや釣り、ランニングなど、それぞれの趣味やアクティブライフスタイルを楽しむためのプロダクトを、高いモチベーションのもとに開発しているのです」

ランニングやトライアスロン向けのGPSウォッチ、ロードバイクに装着するGPSサイクルコンピュータ、登山・アウトドアで命綱となり得るGPSナビ、世界41000コースに対応し、距離計測できるゴルフ用GPSウォッチ。近年ではダイビングコンピュータやパイロットウォッチまで、それぞれの専門的な製品で、アクティブライフスタイルを支えているのだ。

アウトドアシーンで活躍するこうした確固たる目的のある設計が、同社の社員同様、現代においてアクティブライフスタイルを志向する層の心を捉えている。

毎朝のランニングで思考の整理をしたり、趣味で飛行機を操縦したりと、自らをもってアクティブライフスタイル派を任ずるペンブル氏。ガーミンのさらなる飛躍のため、特に日本市場に注目していると語る。

「アジア地域の中でも特に重要な市場のひとつであり、ウェアラブル機器の需要も増加しています。電子決済機能『ガーミンペイ』も利用可能になります。日本市場への注力は、ガーミンをより一層成長させることにつながるのです」

このほど世界同時発売された「fenix 5 Plus」は彼の意気込みを体現したようなモデルだ。このウェアラブル端末は、高精度のGPSによるマッピング、音楽再生、運動データのクラウド蓄積に加えて、電子決済機能「ガーミンペイ」をも備える。普段の生活とアクティブシーンを隙間なくつなぐこの最新モデルは、アクティブライフスタイルの理想を体現するかのようだ。

「我々はテクノロジーによってユーティリティを生む企業として、これからも挑戦を続けていきます」


耐久性と軽量性を兼ね備えたスマートウォッチ「fenix 5 Plus」。Garmin Connect™に活動データをアップロードできるほか光学式心拍計やGPSなどを搭載。


クリフ・ペンブル◎ソフトウェアエンジニアとして創立間もないガーミン・インターナショナルに参画。同社初期のメンバーとして、システム・ソフトエンジニアリングのマネジメントなどさまざまな分野でリーダーシップを発揮してきた。2007年には最高執行責任者社長、そして13年よりCEOに就任。

文=稲生 遼 構成=大野重和 写真=伊藤 勇

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