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そんなイベントが最も盛り上がりを見せるのが、当然、世界ナンバーワンの起業家が選ばれる最後のガラディナーから表彰式への流れだ。その会場にはエントランスまでの道に黄色の絨毯が敷き詰められ、ブラックタイとイブニングドレスに身を包んだ参加者たちが続々と会場内に入っていく。その様子はあたかもハリウッド映画祭のようだ。

世界一の発表を待つ会場では、大型スクリーンに各国の代表たちの映像が次々に流れていく。高まる会場の熱気、その興奮が最高潮に達するそのとき、世界の頂点に立つ起業家が発表される。18年の世界一に選出されたのは、ブラジルの代表、MRV Engenharia e Participações社(以下、MRV社)の会長 ルーベンス・メニンだ。世界一が発表されたその瞬間、会場の天井のドームが開き、モナコの夜空に盛大な花火が打ち上げられ、会場内からは割れんばかりの歓声が上がった。

ルーベンスが評価されたそのポイントは、イノベーションを積極的に取り入れる起業家精神と、公平で平等な社会を目指すその理念だと審査委員長は語る。ルーベンスは受賞時のコメントで聴衆を前にこう述べた。「私たち起業家の役割は、利益を生み出すことではない。社会にある課題を解決し、社会をより豊かにすること。それこそが、我々が果たすべき役割だ」。

今回のイベントで感じたのは、各国から集まった起業家の社会貢献への意欲と情熱だ。優勝者のルーベンスを筆頭に、取材した多くの起業家が口にしたのは、技術の話でも、企業の成長率でも、利益の話でもない。それは、事業を通して、いかに社会に貢献をするかということだった。なぜこれほど、世界トップの起業家たちが、異なる国から集まり、異なる年代を生きているのに、同じ言葉を口にするのか。もしかすると、このことこそ、事業の成功に最も必要なことなのではないか。そんな彼らから見えてきたものは「ポスト資本主義」の姿なのかもしれない。

リーマンショック以前の世界で追求されてきた、相手を打ち負かし、自らの富を最大化させる「強欲的な資本主義」。そしてそれ以後に立ち上がった「破壊的技術」を駆使し、競合を蹂躙するかのようなテクノロジー新興企業。いずれも通底するのは、自分が栄えるために、誰かを犠牲にする思想にも見える。少なくとも、WEOYに参加した起業家たちは、そのいずれも「是」としていない。では、今、彼らが大切にする「社会へ貢献する」何かを生み出すために何が必要なのか。

それは、近年グローバルに注目を集める「共創」の概念だ。今回モナコの地を踏んだ多くの起業家たちが私たち取材陣に語ったのは、その「競争」を超えた「共創」の精神である。

異なる産業で活躍するプレイヤーが手を取り合い共創する。その結果として、今までの産業の垣根にとらわれない新しい事業の形が見えてくる。そう、まさにWEOYの場もまた、起業家が出会い、情報交換をすることができる「共創」をするための場としてデザインされている。

そして、共創は事業を持つ者同士だけのものではない。経営者と従業員、そして、その家族。さらに顧客や地域を含めた、ステークホルダーたち。彼らを巻き込み、事業を共に創り上げていく。これこそが共創ではなかったか。

自身が身をおく地域を、社会を、そして、世界を豊かにしたい。そんな純粋な想いや大義を拠りどころに集まった人たちによって、未来は本当に価値あるものに変わっていく。そんな当たり前だけれど、忘れがちな真実に気付かされたイベント、それがWEOYであった。

構成=谷本有香 文・写真=小田駿一

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