GPIFのESG投資は約1兆円からスタートし、3〜5年かけて国内株投資(約37兆円)の9%に当たる3兆円程度にまで増やす予定だ。
GPIFが採用しているESG評価は3つあるが、そのうちの1つ、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の「MSCIジャパンESG セレクト・リーダーズ指数」は、日本企業時価総額上位500社の親指数のうち、ESG評価が高い銘柄251社を選定してAAAからCCCまで7段階で評価している。
そのESG格付ははっきりしている。2017年、最高位格付けのAAAを獲得したのは、住友化学、NTTドコモ、KDDI、大阪ガス、ダイキン工業、デンソー、オムロン、積水化学、イビデン、国際石油開発帝石の11社。
その一方で、最低位のCCCに格付けされたのは、東京電力、東芝、SMC、三菱自動車、スズキなど。下から2番目のB評価には、ヤフージャパン、ディー・エヌ・エー、コーセー、ソニーフィナンシャル、スルガ銀行など、有名企業がずらりと並ぶ。
2017年にCCC及びB評価を受けた企業は、すでに2018年のMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数からは “除外”された。それはつまり、GPIFのESG投資対象から“除外”されるということである。
機関投資家が保有する株式を市場に売却すれば、当然、株価は下落する。
企業の価値はこれまで、主に四半期ごとの業績を良く見せること(短期的な業績)によって高められるものだったが、これからは業績に加え、ESGへの取り組み、すなわち中長期的な成長戦略やリスクマネジメントも企業の価値を上下させることになる。
日本では始まったばかりのESG投資だが、世界のESG投資はおよそ10年前から始まっており、2016年の投資額は2500兆円(22兆8900億ドル)に達する。世界の総投資額90兆ドルの4分の1を越えようとしている。日本はこの分野でも世界に大きく遅れをとっているのだ。
サステナビリティ・ESG投資のニュースサイト「Sustainable Japan」を運営するニューラルCEOの夫馬賢治氏に、話を聞いた。
──世界のESG投資はいつ、どのうように始まったのでしょうか。
「ESGという言葉は、2006年、国際連合が設立した「PRI(Principles for Responsible Investment、責任投資原則)」の中に初めて大きく登場しました。PRIに署名するには、世界の機関投資家が今後守るべき6つの原則を遵守する必要があり、その原則の1つには「我々はESGの課題を、投資分析と意思決定プロセスに組み込む」と書かれている。
アメリカで最大規模の機関投資家であるカリフォルニア州職員退職年金基金のカルパースや、ヨーロッパの年金基金など、世界の多数の機関投資家は2006年の設立時署名しました。そこからESG投資の動きは世界に広まっていきます。
──日本でESGという言葉が聞かれるようになったのは最近です。先進国の中で日本人だけが知らなかった?
そうです。実はMSCIのような海外の評価会社のESG格付は2006年以前からなされていて、日本企業も知らず知らずのうちに格付けされていたんです。ただしGPIFが昨年採用するまで、日本にESGを投資基準に採用する機関投資家はほぼなかったので、金融市場も上場企業も、誰も、その存在すら知らなかったのです。