──日本企業はCSRを重視し、環境や社会に対する取り組みは進んでいるものと思っていました。
企業が「責任を果たす」ために取る行動と、「企業価値を高める」ために取る行動の違いは大きい。CSRは前者、ESGは後者です。その違いは、リーマンショック後の日米の対応に顕著に現れました。
日本とアメリカの企業はあの時、真逆に動いた。日本企業は利益が少なくなった分、CSRの予算を大幅にカットした。しかしアメリカ企業は、2008年からCSRやサステナビリティに取り組む部門が大幅に増えたのです。
──興味深いですね。なぜでしょうか。
米国のCEOたちはリーマンショックが起きた時、これまでのような短期志向で利益を追い求めていては、企業が永続できないと気づいた。今後、長期的に成長していくためには、何が重要なのか。環境や社会やガバナンスに“弱い”ことが大きなリスクになり、“強い”ことは企業の価値を高める武器になるとわかったんですね。
そこに気付かず予算を縮小した日本企業は、世界から大きく遅れてしまった。世界では欧米はもちろん、シンガポールでも香港でもESGは当たり前になっていて、企業はすでに、いかにESGでブランドを作るかを競っている。
──日本企業は11社がAAAを獲得しています。
ESGを知らなくても、日本には環境、社会、ガバナンスに対して最高レベルの会社がそれだけあったということです。ESGに対して努力して獲得したわけではなく、様々な取り組みが評価されて知らない間にAAAを貰っていたんですね。素晴らしいことですが、やはり日本は10年遅れている分だけ、数は少ないですね。日本のESG投資はわずか3%に過ぎません。
──ヨーロッパはESG投資が5割を超えています。アメリカはヨーロッパよりも遅れているようですが、その理由は?
アメリカがヨーロッパよりも遅れた大きな理由は、法律でした。アメリカには年金基金の運用を取り締まる「エリサ法」があります。機関投資家は加入者の年金を預かって運用しているわけですから、リターンを最大化させる義務がある。アメリカでは当初、ESG投資は「リターンを犠牲にするため、エリサ法に抵触する可能性がある」と考えられていた。極論を言えば背任行為として訴訟を起こされる可能性があると、機関投資家は恐れたわけです。
しかし4年前、ついに「ESG投資はエリサ法に抵触しない」と解釈が変わった。それでアメリカもESG投資が解禁され一気に増加し、2016年にはESG投資は2割を超えています。
他には宗教的な理由もありますが、こちらは説明が長くなるため、またの機会にしたいと思います。
──なぜアメリカで解釈が変わったのですか。
先行していたヨーロッパのESG投資のパフォーマンスが出だしたからですね。ESG投資の方が、ESG以外の投資よりもむしろパフォーマンスが高いことが証明されたのです。それで世界の機関投資家が大手を振って投資をするようになった。そうなると企業も本気にならざるをえない。ESG評価が高ければ、より投資が集まり、企業価値も高まるわけですから、株主の圧力も高まるわけです。