フォーブスジャパン コントリビューティング エディター/ライター


──ESGの取り組みによって企業価値を高めている企業は多くありますか?

アメリカとヨーロッパの大企業は驚くほど、いろんな取り組みをしています。コカコーラ、マクドナルド、ウォルマート、スターバックス、ナイキ、GAP、マイクロソフト、アップル、グーグル、P&G、ユニリーバ……、みなさん知っている企業だけを挙げてもキリがない。どの企業も革新的な取り組みをしています。

──今名前の挙がった中には、事業的に成功していても、むしろ環境や社会に対しては、良くないイメージがある企業もあります。

ですよね。しかしこの10年ですっかり変わってしまいました。

わかりやすい事例で言えば、スターバックスは今、全世界で使っているコーヒー豆の99%がフェアトレードで、もう直ぐ100%を達成します。みなさんがスタバで何気なく飲んでいるコーヒーはほぼフェアトレードです。アフリカの森林の多くはコーヒーのプランテーションによって土が痩せ、砂漠に変わりましたが、フェアトレードでは労働環境と自然環境を守ります。

揚げ油やチョコレート、マーガリン、石鹸、シャンプーに使われ、植物油として最も生産量の多いパーム油の原料となるアブラヤシは、インドネシアやマレーシアが大生産地で、その多くは焼畑農業によって生産されていました。しかし今、P&Gやユニリーバは一切、焼畑農業によって生産された原料を使いません。



──焼畑農業は森林破壊の最たる例ですね。

ナイキやGAPでは、数年以内に全ての綿製品がオーガニックコットンに変わります。オーガニックではない従来のコットン生産は、大量の枯葉剤を使うため、農業従事者と紡績産業従事者の健康を害し、土壌や水質、大気環境を汚染します。

マクドナルドはかつて、調達する牛肉に対して厳しい基準を設けていなかったため、農家は牧草に対して多量の農薬を使い、牛の出荷を早めるために大量の成長促進剤を使っていました。

しかし今、マクドナルドは5年前に環境や健康に配慮した基準を設け、トレーザビリティを厳格化した。さらにそれをファストフードの業界全体に広めるべく、業界団体を作った。また数ヶ月前、マクドナルドは全てのプラスチックをリサイクルする方針を打ち出しました。

──マクドナルドの取り組みは特に、意外です。

世界中で実現するということで、日本マクドナルドも対応しなければいけないということで、かなり今、苦労しているようです。

これらは単に商品の差別性ではなく、サステナビリティの観点で高い意味を持ちます。コストを抑えるために労働環境が悪く、搾取するような農場では、安定した労働者が確保できず、ストライキのリスクがあるし、森林を破壊しながら生産していく産業はいずれ畑がなくなる。環境破壊は訴訟のリスクがある。

いずれも、環境や社会に対して不誠実な企業は批判を浴び、世界で不買運動やネガティブキャンペーンが起こる可能性もある。明日もハンバーガーとポテトを提供し続けるためには、そうした重大リスクを減らさなければいけない。今、世界企業は、将来にわたって永続するビジネスモデルに作り変えているのです。そしてそこに世界のお金が集まっている。この流れに、日本は早く追いつかなくては、危ないと思います。


夫馬 賢治◎株式会社ニューラル代表取締役CEO。サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリー会社を2013年に創業し現職。同領域ニュースサイト「Sustainable Japan」運営。国連責任投資原則(PRI)署名機関。環境省バックアップの「21世紀金融行動原則」のメディア協力企業。ESG投資、サステナビリティ経営、気候変動金融リスクに関する講演、寄稿など多数。

文=嶺 竜一 写真=加藤昌人

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