ファッションディレクターの森岡 弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る連載。第17回は、ハンティング・ワールドの「ウィンウッド」をピックアップ。
小暮昌弘(以下、小暮):今回は、アメリカで1965年に創業された老舗のハンティング・ワールドですね。冒険家で、環境保護にも造詣が深かったロバート・M・リー、通称ボブ・リーが創業したブランド。彼にはインタビューさせていただいた経験があります。
森岡 弘(以下、森岡):僕が二十歳ぐらいのときに、大阪でものすごく流行っていたんです。
小暮:東京でも流行っていましたが、大阪のほうが、勢いがすごかったですね。
森岡:個人的な印象では、ハンティング・ワールドは、大阪から流行った気がします。
小暮:あのころは、東京よりも大阪のほうがインポートものを取り入れるのが確実に早かったですから。海外、特にアメリカに出かけると、このバックをお土産に買ってくる人もたくさんいました。
森岡:確かにそうですね。本当にみんな持っていましたよ。当時、大阪にはアメリカ村とヨーロッパ村というファッションの2大発信地があって、ハンティング・ワールドはヨーロッパ村で流行っていた。だからハンティング・ワールドは、僕はアメリカものというよりも、“イタリアもの”みたいなイメージでしたね。みんな、いまでいうヨーロッパのラグジュアリーブランドの服と合わせていた記憶がありますよ。
小暮:確かバッグも服もイタリアでつくられていたのでは。いまもそうだと思いますよ。あのころ、流行っていたのは、オリジナルの「バチュー・クロス」を使ったバッグ。No.6045の品番で知られる「エクスプローラーズバッグ」と呼ばれたモデル。72年の発売です。みんなが持っていたのもこのショルダーバッグでは。
森岡:時期的にまさにそうですね。「バチュー・クロス」は、ボブ・リーが旅の道具であるカメラやフィルムを暑さや湿気、土埃から守る目的に開発した、機能素材の先駆けともいえます。
小暮:ポリウレタン・フォーミングなどを何層も重ねたもの。この素材と色が独特で新しく、デザイン的にも多くのバッグメーカーに影響を与えました。2010年に現在の定番コレクション「バチュー・サーパス」が誕生しました。