エネルギーや製造、医薬、建設といった分野の先進企業を抑え、同社が世界で最もサステナブルと評価された理由は何か。ダッソー・システムズ、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのフローレンス・ベルゼレンに話を聞いた。
──世界1位のサステナビリティとは、何が評価されたのでしょうか。
当社は現在、航空宇宙、自動車、建設、海洋、エネルギーなど大きなプロダクトから、素材、医薬品開発などミクロの分野まで12の産業領域に展開し、世界130カ国22万社に3次元モデリングを核とした開発プラットフォーム3DEXPERIENCE を提供しています。
当社が最高の評価を受けたのは、当社自身の将来にわたる環境や社会に対する貢献だけでなく、当社の世界中の顧客が、当社のシステムを使用することによってサステナビリティを高めていることを評価いただいたものだと考えます。
──どのように顧客のサステナビリティを高めていますか?
まず当社のシステムの基本的な貢献は、プロダクトの試作・設計を簡略化させることです。開発において重要な衝突試験や強度試験、風洞実験などの多様なシミュレーションをコンピュータの中でバーチャルに行うことにより、試作と実験、検証の回数を大幅に減らして、時間とコスト、廃棄を大きく省略することができます。
従来、新型自動車は企画から市場投入まで5〜6年を要しましたが、昨今のEV(電気自動車)のスタートアップは会社設立から2年もあれば最初のモデルを発売します。3Dシミュレーションはその実現に貢献しています。現在、テスラ社をはじめ、世界のEVのスタートアップの8割は当社の開発プラットフォームを使っています。
──ベンチャーの課題であるコストと時間を削減している?
その通りです。さらに社内の部門の壁を越えるデジタルトランスフォーメーションを可能にします。例えば設計とセールスは、以前は分断されたプロセスでしたが、3DEXPERIENCEによって、同じ3Dモデルを見ながら、例えば軽量化とマーケティングの観点で、デザインについて会話ができるようになりました。
開発プロセスだけではありません。ボーイング社は先日、新型飛行機の開発を当社の最新のプラットフォームを利用して行うことを決めました。それは飛行機の機体の設計にとどまらず、生産プロセスの設計、プラントの設計、製造、飛行を開始してからの保守・メンテナンス、廃棄・リサイクルまで、全て一気通貫で一つのプラットフォームで管理します。これをプロダクト・ライフサイクル・マネジメントと言います。
これによって、寿命が長く省エネルギーで補修、保善もしやすい機体の設計、水・資材・廃棄物を最小限に抑えたプラントの構築が可能になる。環境に対して大きなインパクトを与えるプロジェクトです。