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「全米球場跡地巡り」に感じるロマン

 
ところで、あるテレビ番組で東京・丸の内の歴史について紹介されていた。江戸時代にその地にあった大名屋敷は、今となっては一つも残っていないが、丸の内には今でも同じ街区が残っている。その理由は、大名屋敷の大きな街区を生かして高層ビルが次々と建設され、オフィス街となったからだという。球場跡地もこれと全く同じことが言えるのだ。

ピッツバーグやシカゴの球場跡地には、その大きな区画を利用して大学が建設された。ほかにも全米各地には、病院や高層アパート、教会ができている球場跡地もある。丸の内に江戸の歴史が宿っているのなら、野球場の跡地には、当時の野球場の歴史が宿っているのだ。

アスレチック・パーク跡地には雑居ビルがあり、そこに先に紹介した「バー508」と「ルーン・カフェ」が入っている。いずれもツインズ・ファンの集まるスポーツバーだ。1982年にオープンしたルーン・カフェは、いわゆる「ベスト・ベースボール・バー」特集では必ずといっても良いほど上位でランクインしている。


「ルーン・カフェ」の外観
  
ルーン・カフェのあるダウンタウンから、定宿まではライトレールという電車で30分以上かかる。ビールを2杯飲んでしまったので、帰り際、トイレに寄ろうとバーの後方の通路を歩いていると、すごいものを発見してしまった。

ちょうど自分が立っていた場所は、アスレチック・パークのライト・フィールドのコーナーがあった場所で、それを示す記念プレートがあったのだ。このこだわりが僕のような野球マニアを唸らせる。ほかにも、アスレチック・パークについてふれた書物が飾られているなど、地味ながらも120年以上も前にあった球場の歴史が残されていて、アメリカ野球の奥深さを改めて感じた。

2010年、アスレチック・パーク跡地のすぐ近くに、ミネソタ・ツインズの本拠地ターゲット・フィールドが完成した。この場所は、もともと倉庫街だったが本拠地の建設に伴い徐々に開発が進み、今やミネアポリスで最もお洒落な地区となっている。野球場が町興しに貢献した良い例だ。

アメリカでは、今まさに、空前のクラフト・ビール・ブームで、ミネソタ州も例に漏れない。地元に長く住む日本人の方によれば、ミネソタ州は、お隣のウィスコンシン州と同様、ドイツからの移民が多く、地ビールの種類が豊富だという。球場周辺の旧倉庫街にも、フルトン・ブリューイング・カンパニー、モディスト・ブリューイング・カンパニーなどのブリュワリーが続々と誕生し、若者たちがカフェ感覚で利用している。

アスレチック・パークの跡地は、当時の区画がそのまま生かされ、そこにできたスポーツバーでは当時の歴史が今でも大切に守り抜かれている。そして、そのすぐ近くに完成した最新球場周辺では、今もなお、熱狂的な野球ファンがビール片手に地元の球団を熱心に応援しているのだ。

連載 : 「全米球場跡地巡り」に感じるロマン
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文=香里 幸広

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