香りだけじゃない ハーブは「塩漬け」生活の救世主

市場でもさまざまなハーブが売られている


人間の舌の上では確かに、塩味、甘味、苦味、酸味、旨味(UMAMI)という5つの味を感じることができますが、塩や砂糖が舌を通して脳に直接的に届きやすいのに対し、UMAMIや季節の薬味は、どちらかというと腸を通して体に作用します。お味噌汁のようにホッとさせてくれたり、効能のあるハーブが体調を整えてくれたり。

代表的なところでいうと、ガストロノミーと言われる高級料理やご褒美の甘いデザートなどを美味しいと感じるか、家族の健康を考えておばあちゃんがつくる地域伝統の味を優しいと感じるか。脳と腸、どちらで感じるかによって美味しさの持つ意味は異なるのです。


クミン(苦)、レモン(酸)、玉ねぎ(旨)、砂糖(甘)、塩、トマトに何を合わせたときに美味しいと感じるか

健康的で美味しいということ

7月、8月の日本帰国時には、様々な和食を食べる機会がありました。どれも丁寧で、非常に美味しいと思いましたが、基本的な味付けは塩っぱいか甘いかで、脳が喜ぶ料理が多いなと感じました。

海外の医療機関からは「日本人は塩分摂取量が多い」と指摘されて久しいですが、確かに和食は塩分が多く、特に外食では特にそれを感じます。忙しく働き、SNSには食欲をそそる写真が溢れ、ついつい外食に流れる気持ちもわかりますが、こうした食事が生活習慣病や現代病の一因にもなることは改めて意識したいところです。

食以外にも、ゲーム、ギャンブル、インターネットなど、現代社会には脳の欲求を麻痺や破綻させる要因が溢れていて、ストレスも多い日々の中で精神のセルフコントロールは簡単ではありませんが、旬なハーブと暮らす南仏にいると、季節や自然に沿った生活ができると心身共にもっと豊かになるのではと思います。

実は「健康」という言葉は、西洋医学が入ってきた明治時代から使用されるようになった新しい言葉の一つです。その言葉を初期に使っていた福沢諭吉が当初「health」を「精神」と訳したという説もあるように、健康という言葉の背景には、身体的なところだけではなく、精神的な要素が含まれています。

「美味しいものを食べたい」というのは誰もが思う日々の喜びのひとつですが、脳への快楽ばかりではなく、精神的にリラックスできる食習慣を心がけてみてはいかがでしょうか。

連載:ニース在住のシェフ松嶋啓介の「喰い改めよ!!」
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文=松嶋啓介

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