世界的な大都市が「住みやすさ」でトップになれない理由

カナダ・バンクーバー(Getty Images)

世界で最も住みやすい10都市の最新のランキングには、米国の都市が一つも入っていないことが分かった。

英誌エコノミストの調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が先ごろ発表した今年の「世界で最も住みやすい都市ランキング」によると、トップ10には米国の都市名が見当たらなかった一方、同じ北米のカナダでは、カルガリー(3位)とバンクーバー(6位)、トロント(7位)の3都市が上位に名前を並べた。

だが、こうした結果は必ずしも、米国の都市が“悪化”していることを意味するわけではない。各国のその他の都市が、評価項目におけるスコアを上げているということだ。

例えば、主要な評価基準(治安、教育、医療、インフラ、ライフスタイルなど)でスコアを下げていないにも関わらず、昨年トップ10に入っていた次の各都市は、今年は11位以下にランクを下げている。

・オークランド(ニュージーランド) 8位 → 12位
・パース(オーストラリア) 7位 → 14位
・ヘルシンキ(フィンランド) 9位 → 16位
・ハンブルグ(ドイツ) 10位 → 18位

上位に入る条件

EIUによれば、「住みやすさ」で上位に入る各都市には、いくつかの共通点がある。獲得したスコアが最も高かった都市の多くは、富裕国の中規模都市だ。また、上位10都市に名を連ねたのは、人口密度が比較的低く、犯罪率が低い都市、インフラに過重な負荷がかかっておらず、住民にとって魅力的な文化・レクリエーション活動が盛んな都市だ。

また、EIUのアナリストらは、世界的なビジネスの中心地とされる各都市の“成功”は、住みやすさにおいては裏目に出ていると指摘している。

大都市はインフラに過重な負荷がかかっているほか、貧困、犯罪率の高さ、混雑といった問題がある。さまざまな機能や高い生活の質を提供するニューヨークとロンドンの順位はそれぞれ57位、48位となったが、その原因はこうした大都市の特徴だとみられている。また、パリが19位にとどまったのも、同様の理由によるものとされる。

50位までの大半は欧米の都市

今回の調査で「世界で最も住みやすい都市」となったのは、オーストリアの首都ウィーンだった。ほかに欧米の都市でトップ10に入ったのは、9位のコペンハーゲン(デンマーク)のみとなっている。

ただし、50位までを見てみると、大半を占めるのは欧米の都市だ。欧州からは20位までに9都市、66位までに26都市が入った。米国の都市では、最も上位に入ったホノルルから50位のロサンゼルスまで、11都市がリストに名前を並べている。

一方、新興国ではブエノスアイレス(アルゼンチン)が62位、モスクワ(ロシア)が68位、サンクトペテルブルクが(同)が70位となった。そのほか、リオデジャネイロ(ブラジル)が88位、サンパウロが(同)が93位に入っている(暴力犯罪という重大な問題を抱えることを考えれば、意外な結果だ)。

編集=木内涼子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事