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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Marcio Jose Bastos Silva / Shutterstock.com

日本ではいま、東京医科大学の不正入試問題が世の耳目を集めているが、アメリカでも、大学入試に関して、大きな話題となっている裁判がある。アジア系アメリカ人に対して、入試審査で偏見があるとしてハーバード大学が訴えられている係争が、いよいよ法廷審理に入ることになったのだ。

これまで、さまざまな人種がハーバード大学を卒業している実態(オバマ前大統領はハーバード大学院卒)から、メディアは、それほどこの訴訟を大きく採り上げてはこなかった。しかし、入試審査のノウハウが他校に模倣されることを懸念して、ハーバード大学が証拠開示に硬直的な態度を示すと、突如として、社会の関心がこの裁判に向いてきた。

ルールの明確化とフェアプレーをなにより重んじるアメリカ社会のなかでは、アメリカの大学審査の「ブラックボックス」は異色の存在なのだが、いままでは社会との信頼関係でそこをつつかれることはなかった。神聖なる学府であり、社会に対して多様性を訴えているフロントランナーであり、人種差別がもっとも少ない組織がアメリカにあるとしたらそれは大学だと思われていた。

ところが、ニューヨークタイムズによれば、少数民族を多数入学させて「多様性」を実現するというハーバード大学のポリシーの、その「少数民族」に、アフリカ系アメリカ人や先住民やラテン系は入っていても、アジア系が入っていないというのが訴訟の理由で、意識的な人種排除は憲法違反というのだ。実際、民事訴訟とは別に、法務省がこの件で捜査に乗り出したという報道もある。

学力、スポーツ、ボランティア活動

そもそも、アメリカの大学入試は審査であって、日本と違って、入学試験ではない。では、何を審査するかというと、全国学力テストとでもいうべきSATやACTという試験のスコアと、高校の成績、課外活動、スポーツや音楽などの実績、ボランティア活動、そして小論文が主たる選考ポイントだ。

しかし、それぞれの選考に、ポイント配分のルールがあるわけでもなく、陸上競技のインターハイ出場と地元のホームレスへの支援活動と、どちらのほうが受験に有利かと聞かれても、大学側は絶対に答えてはくれない。選考は、あくまで「ブラックボックス」のなかで、誰かが確実に優劣をつけている。

入学希望者は、高校の成績をオールAにすべく、宿題と期末試験の勉強に精を出すのはもちろんのこと、SATを何度でも受けスコアアップに精を出す。それだけでなく、家庭教師をつけて小論文の練習をする。予備校もあり、夏休みの合宿セミナーなどは有名だ。

それだけ一心不乱に努力をしているのだから、スポーツとボランティア、どちらが有利なのかは死ぬほど知りたい。筆者もわが子の受験を経験しているので、30校ほどの大学見学会に参加し、説明を聞いた。無数の質問もした。

しかし、どんな質問をしても、ブラックボックスの中身を教えてもらえることはなく、「こういうものは相性もあり、ご縁だから」とはぐらかされてきた。はぐらかされれば、学生はみな、スポーツにもボランティアにも両方励むようになり、選択と集中ができないゆえに、トータルの拘束時間はまさに膨大なものとなる。

文=長野慶太

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