ビジネス

2018.08.19 12:30

中国コワーキング業界の台風の目「Kr Space」創業者の野望


一方、IDG のYanによるとWeWorkは認知度で勝っているという。WeWorkは最近、ソフトバンクから10億ドルを調達しており、その前には中国子会社がシンガポールの政府系投資会社テマセク(Temasek)などから5億ドルを調達している。また、4月には中国の同業である「Naked Hub」を4億ドルで買収しており、年内に拠点数を40カ所、会員数を4万人に増やすことを目指している。

情報筋によると、WeWorkの共同創業者でビリオネアのAdam NeumannとLiuは北京で会い、事業統合の可能性について議論したことがあるが、支配権を巡って意見が対立して実現しなかったという。WeWorkの広報担当者は本件に関するコメントを拒否し、中国での企業買収の可能性についても否定した。

中国政府はイノベーション活性化のために、国を挙げて起業を促進しており、これを追い風にコワーキングスペース業界は急成長している。北京に本拠を置くコンサルタント会社「iResearch」によると、昨年の中国コワーキングスペースの市場規模は55億ドル(約880億円)で、2019年までにほぼ倍増の94億元(約1510億円)に達する見込みだという。

不動産サービス企業「Jones Lang LaSalle 」によると、2018年の第1四半期には北京や上海にあるA級オフィスビルの3300万㎡ものスペースがオフィスシェアに使われたが、2020年までには4200㎡を超えるという。

「この業界は急成長している。従来のオフィス賃貸に取って代わるわけではないが、産業全体にとって重要な役割を果たすだろう」と「JLL Beijing」で調査マネジャーを務めるMi Yangは話す。

Kr SpaceとWeWorkチャイナ以外にも、万科集団の元幹部であるMao Daqingが設立した「Ucommune」が中国のコワーキングスペース業界をリードしている。Ucommuneは最近、「Workingdom」や「Wedo」、「New Space」、「Woo Space」などの同業を相次いで買収している。3月には「Wujie Space」と合併し、評価額は110億元(約1770億円)に達した。

黒字化よりも事業拡大を優先

Kr SpaceもUcommuneも、ユニコーンの仲間入りを果たしたものの、まだ黒字化は達成していない。両社は、長期的にはプレミアムなライフスタイルやコミュニティサービス、広告の提供などで利益の向上を図る予定だ。iResearchのアナリスト、Yu Kexinによると、これらは不動産のリースよりも大きい利益が見込めるという。

WeWorkもまだ黒字化を達成しておらず、昨年は8億8600万ドルの売上高に対して9億3300万ドルの赤字だった。200億ドルの評価額には、同社が将来的にライフスタイルブランドとなり、教育やソフトウェア、コミュニティサービスで稼げるようになるという期待が織り込まれている。

Liuは、目下のところ黒字化よりも事業拡大を優先させている5月には香港の湾仔(ワンチャイ)にあるビル「ワン・ヘネシー(One Hennessy)」で7階分のコワーキングスペースを開業した。他にもバンコクやソウル、シンガポール、東京に進出を予定しており、2021年までに総オフィス面積でWeWorkに追いつくことを目指している。

「WeWorkはアジアに進出したばかりで、この地域では我々と同じ位置にいる。我々は、この市場で必ず勝利しなければならない」とLiuは話した。

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事