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課題先進国の日本だからこそ、ソーシャル・アントレプレナーが活躍できる

常に人と違う道を選ぶことを大切にしている僕からすれば、いまのソーシャル領域は狙い目だと言えます。世界一の少子高齢化や国の財政破綻など、これからの日本は課題が山積み。社会課題を解決するというニーズは確実に増えていくでしょう。

特に若い世代の人には、まだ黎明期のいまだからこそ、ぜひともソーシャル領域に目を向けてほしい。みんながソーシャル領域の重要性を知ってから業界に足を踏み入れるのでは遅いんです。

今後、個人的には技術だけをウリにして起業するのはカッコ悪いと思われる時代が来ると思っています。すでにFacebookのマーク・ザッカーバーグはそうした時流を意識しているような印象がありますが、誰もが「自分の仕事が社会にどう影響を及ぼしているのか」を考えることが当たり前になると思います。
 
僕はソーシャル・アントレプレナーと呼ばれることが多いですが、この価値定義を改めるべきかもしれません。日本において、ビジネスで社会課題を解決しようというソーシャルアントレプレナーシップの気運が盛り上がったのは、2005年頃のことでした。牽引役は、「ライブドア・ショック」や「アメリカ同時多発テロ事件」に影響を受けた世代です。でも、いまの若手は「東日本大震災」に影響を受けた世代で、価値観はまた大きく違うはずです。

いまの時代において、ソーシャル領域は明確にビジネスと密接な結びつきを持っています。また、ビジネス領域でも単に利益を追求するのではなく、社会課題に目を向ける重要性が高まりつつあります。両者の境界線は近年、ますます融解しています。

こんな時代にあっては、ビジネスと社会課題解決の垣根は低くなり、「ソーシャル・アントレプレナー」と通常の「アントレプレナー」の区別も曖昧になっていくでしょう。でも、そんな時代だからこそ、「ソーシャル・アントレプレナー」というカテゴリに意味があると僕は思います。

なぜなら、両者の区別をなくしてしまえば、すべての起業家がビジネスの規模のみで評価されがちだからです。でも、ソーシャル・アントレプレナーの真価は「どれだけ社会を変えられたのか」です。「ソーシャル・アントレプレナー」というカテゴリによって、起業家を評価する「もう一つの評価軸」を提示し続けてほしいのです。

課題が山積みの日本は「課題先進国」とまで言われています。そんな国だからこそ、世界をリードする偉大なソーシャル・アントレプレナーを輩出できるチャンスに満ちあふれているのです。

 


小沼大地◎一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、ビジネスパーソンが新興国で社会課題解決にあたる「留職」を展開するNPO法人クロスフィールズを創業。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shaperに選出、2016年にハーバード・ビジネス・レビュー「未来をつくるU-40経営者20人」に選出される。国際協力NGOセンター(JANIC)の理事、新公益連盟の理事も務める。著書に『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)がある。

文=野口直希 写真=小田駿一

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