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「勉強するためにハーバードへ来たのか?だからお前はだめなんだ!」と怒られる

いまでも鮮明に覚えているハーバードでの出来事は、入学直前の教授との面談です。面談で、これからの2年間をどう過ごすか尋ねられたのですが、「頑張って勉強します!」と無邪気に答えるとメチャクチャ怒られました。

「だから日本人はダメなんだ」と。

その理由を尋ねると、そんなことも分からないのかという顔で、次のように回答してくれました。


ハーバード大学の卒業式にて

「勉強なんていつでもできる。そんなことより、お前がわざわざハーバードまで来た理由は一つしかないだろう。それはハーバードを使い倒すことだ。そのために何をすればいいか?ここにいる世界トップの研究者と仕事をすればいいんだ。教室に座ってお勉強するより、トップ研究者との触れ合いがお前の実力を伸ばしてくれる」

・・・目が覚める思いでした。おっしゃる通りだなと。

また別の教授になるのですが、親切にも次のようなアドバイスをしてくれました。

「共同プロジェクトをするなら、有名教授より、若手の先生がいいと思う。なぜなら有名教授は忙しくて時間を取ってもらえないし、あなたのような若者が思い付きのアイデアを出しても相手にしてもらえないでしょう。それより、これから伸びると思える若手の先生と仕事をして一緒に成長した方が、後々のことを考えても断然いいでしょ!?」

・・・素晴らしい助言でした。人間は弱いもので、すぐ権威や流行になびいてしまいがちです。しかし、自分の眼でしっかりと本質を捉え、これから来るであろう分野を見極めなさいというアドバイスは、その後の留学生活を支える指針になりました。

人生100年時代、いつからが本番か?

こうして28歳の時にハーバードを卒業するのですが、確かに研究スキルは向上したものの、「これがしたい!」という目標が見つかったわけではありません。かといって焦りもありませんでした。

というのも、全く根拠があるわけではないのですが、「50歳くらいにならないと、本当にやりたいことは分からない」と思っているからです。いまは人生100年時代とも言われますから、楽しみは50歳までとって置くくらいがちょうどいいのかなと(笑)それ故、20代~40代は修行の期間だと捉え、たとえ自分に興味がないことでも、ご縁があれば積極的に取り組もうと考えています。

そういう意味でいえば、31歳の時に大きなご縁がありました。それは東京大学で行われたTEDxTodaiというイベントに呼んでもらったことです。最初は「司会者」として呼んでもらったのですが、設立者の本多正俊志くん(2018年にForbesアジア版の30UNDER30に選出)から、「ついでにプレゼンもしてください!」と声をかけてもらったのです。

そこで行った「本当に寿命を延ばすのは何か?」というプレゼンがきっかけとなって、色々な業界の人と知り合うことが出来ました。結果として、多様なプロジェクトに関わらせてもらうことになり、もはや自分が何者なのか自分でも分からなくなっていますが(笑)、そんな状況はありがたいことだなと思っています。

最近、友人のドミニク・チェンに勧められて、「江戸はネットワーク(平凡社ライブラリー、田中優子)」を読み驚きました。江戸時代の文化人は、生涯に20や30を超える「号」を持ち、様々な顔でクリエイティブなことをしていたというのです。つまり、「一貫した自己などない」という前提に立ち、華麗に自分を変化・進化させていたのです。

今回の30UNDER30で選出したのは、若くして一つの「号」を確立できた方々ばかりです。しかし、ノーベル賞を取った直後に研究分野をがらっと変えてしまった利根川進先生のように、決してこれまでの業績に捉われることなく、様々な「号」を持って自分の道を進んでいってもらいたいです。

何しろ、わずか10年前にiPhoneが登場したことを考えると、これからの10年、20年でどのような変化があるか予想もつきません。「一貫した自己」という幻想に惑わされることなく、人生100年時代をしなやかにたくましく生きていって欲しいですし、またそんな姿をこれからも応援したいと思います!



石川善樹◎1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きる(Well-Being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。

文=野口直希 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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