ザラの生産から販売までのプロセスはファッション業界全体にとって、実際にまねようとすることはないとしても、「少なくとも検討はすべきモデル」となっている。
衣料品の世界最大手、インディテックスが運営するザラは、世界96カ国・地域に2000店舗以上を展開する。ザラの売上高の過去15年間の年平均成長率は、およそ12%だ。
ザラの生産プロセスは、小売業界の従来のそれとは異なる。多くの小売業者が新たなコンセプトを製品化し、発売するまでに6カ月以上をかける一方、ザラは統合されたサプライチェーンを通じて、そして工場の半数以上を主要な市場に近接した地域に置くことによって、これをわずか3週間で行っている。
また、小売各社が変化し続ける需要への対応に苦慮するなか、そうした変化を先読みすることができるザラは、この点で苦労することもない。それでは、そのザラの成長の速度が、今以上に高まらない理由はどこにあるのだろうか?
「早さ」でもう勝てない?
ザラは生産数を抑えた新商品の開発を、アジアで行っている。そして、(染色や最終的な裁断・縫製などをしていない)生地をイベリア半島に送り、そこで生産を行う。アジアで大量生産する場合に比べ、生産コストはかなり高くなるが、ザラはマージンを犠牲にすることで、短期間での商品の入れ替えを実現している。
一方、先ごろロイターが伝えたところによれば、ザラは新たな課題を抱えている。
「…インディテックスは、衣料品のオンライン販売を手掛けるブーフードットコム(Boohoo.com)やミスガイディッド(Missguided)といった新規参入の小売業者との間で激化する競争に直面している。競合他社はデザインから販売までをわずか1週間ほどで行う。各社のサイトは毎日更新され、何百点もの新商品が発売されている」
こうした状況を受け、インディテックスはオンライン販売と実店舗ネットワークの統合に向けた取り組みに着手している。
新システム導入へ
今後もファストファッションにおけるトップの地位を維持するため、ザラは新たなテクノロジーへの投資を続けている。7月には、オンラインで注文を受けた商品の発送を世界のおよそ2000店舗で行う新たなシステムを年内に導入すると発表したばかりだ。
オンライン販売で在庫切れとなっている商品でも、顧客の近隣の店舗に在庫があれば、その店舗から発送するこの「ship-from-store」システムについて、ウォール・ストリート・ジャーナルは次のように説明している。
「この新しいシステムには、3つのメリットがあると考えられる。1. 在庫を持っていた店舗に近い場所に住む顧客は、注文した商品をより迅速に受け取ることができる、2. オンラインショッピングの時代にも、実店舗がレレバンス(妥当性)を維持することができる、3. ザラは在庫量をより適切に管理することができる」
いずれにしても、ザラは常に小売業界の“黄金律”と言えるものに従って行動している。全てにおいて顧客を中心に据え、そこから得られる見解に基づき、適切な商品を適切な価格で、適切なタイミングで提供している。