ビジネス

2018.08.10

テスラの独自AIチップ開発で見えた「自前主義」へのこだわり

Photo by Omar Marques/Anadolu Agency/Getty Images


これに対し、エヌビディアの「Xavier」は6種類のプロセッサを統合し、異なるタイプのデータを処理し、コンピュータビジョンやディープラーニング、マッピング、経路計算などのアルゴリズムを走らせることができる。

テスラにとって明るい兆しは、同社が自動運転技術には膨大な計算能力が必要であることをようやく理解したことだ。テスラは、かつて自信を持ってオートパイロットV1をリリースしたが、スマートカメラシステムが補助的な機能にとどまるもので、完全な自動運転とはいえないことが露呈した。

多くの企業が自動運転技術の開発をローエンドから開始しているのに対し、エヌビディアはデータセンター向けの高速コンピューティングからスタートし、自動車向けに安全性能とエネルギー効率に優れた製品を開発した。2年前にオートパイロットV2がリリースされた際には、アメリカ全土を自動運転で走行できることを期待したが、実現には至らなかった。V3で様々な問題が解消されても、また新たな課題が浮き彫りになるかもしれない。

マスクの自社開発主義は時に称賛されるが、それによって人命が危険にさらされないことを祈りたい。エヌビディアが開発したソリューションは安全な自動運転車に求められる演算性能を持つことが専門家によって確認されており、テスラのソフトウェア資産と互換性があるのにも関わらず、マスクはチップの自社開発にこだわっている。

しかし、消費者にとって朗報なのは、テスラをはじめ自動運転業界が、安全な自動運転車の開発にはスーパーコンピューティングが不可欠であることに気づいたことだ。

編集=上田裕資

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