モバイルバッテリーで世界を席巻する深セン企業「Anker」の野望

「Anker」創業者のSteven Yang (c)ANKER

中国の深センに本拠を置く「Anker」は過去3年の間、アマゾンのポータブル充電器カテゴリで売れ行きナンバーワンを記録している。しかし、同社の創業者であるSteven Yangの夢は、バッテリーに限らずあらゆるカテゴリでトップの製品を送り出すことだ。

Ankerは今年、ニューヨークにオフィスを開設しオーディオ製品のブランド「SoundCore」のマーケティングを加速させている。SoundCoreはブルートゥーススピーカーの定番商品となったが、非常に軽量なノイズキャンセリング対応のヘッドフォン「Space NC」や、360度サウンドが楽しめるポータブルスピーカーの「Flare」といった製品も、低価格ながら非常に高いクオリティを誇っている。

「いい音を楽しみたいならば、値段は高くて当然といった認識がオーディオ分野にはあったが、Ankerはそれを変えていきたい」とYangは話す。

Ankerはオーディオ以外のカテゴリにも製品のジャンルを広げている。家電ブランドの「Eufy」からはロボット掃除機も発売し、モバイルプロジェクターの「Nebula」や車載用ドライブレコーダーの「Roav」といったプロダクトもある。

同社は今年4月、キックスターターに持ち運び可能なセキュリティカメラを出品し、310万ドルの支援金を獲得。これは、セキュリティ関連プロダクトではキックスターター史上最大の獲得額となった。

同社のセキュリティカメラの強みは、競合製品のバッテリー寿命が2カ月程度にあるのに対し、1年間のバッテリー寿命を実現したことだ。

Ankerは昨年、約6億ドル(約667億円)の売上を達成。その60%が充電器やポータブルバッテリーからのものだった。Yangは今後、その比率を50%以下に引き下げ、SoundCoreやEufyの売上を伸ばそうとしている。

しかし、Yangは同社の主力製品であるバッテリーの未来に関し、さらに野心的な夢を抱いている。現状ではガジェット好きの人々の多くは、製品ごとに様々なバッテリーや充電器を用いているが、Yangと彼のチームは一つのバッテリーで全てのデバイスが充電可能になる未来を描いている。

「スマートフォンやオーディオ製品の多くは、イヤホンを同梱せずに売られている。なぜなら、それを買い求める人はみんなイヤホンを既に持っているからだ。充電器にも同じ未来がやってくるはずだ」

そんな夢を実現した製品の一つが、Ankerの2ポートUSB充電器「PowerPort II」だ。この製品はUSB-CとUSB-A出力に対応し、MacBookやアンドロイド端末、ミラーレスカメラやドローンの充電にも使用できる。

Yangによると、全てのハードウェアメーカーが専用の充電器の同梱をやめれば、プラスチックごみの削減にもつながるという。それはAnkerの未来を考える上でも理想的な状況といえる。

編集=上田裕資

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