ビジネス

2018.08.09

デトロイトの復興から学ぶイノベーションに必要な「3つの考え方」

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ビジョンも絶え間ないアップデート

世界的に見ると、日本は長寿企業の多い国です。アメリカ型のように新しい企業が既存の枠組みを破壊することを礼賛するのではなく、長く培ってきた企業の伝統や資産を、変化する時代に適応して新しい価値に変化させていく、丁寧な醸成型のアプローチが必要だと考えています。

そのために重要なのは「妄想から始まる大義」「構想した未来の可視化」「資源の棚卸と組み替え」の3つ。歴史認識を基に求心力のある企業の大義を語り、自立した個人が共感し、その企業の持つ人を含めた資源を自在に組み替えて、再編成し常に新たな価値を社会に提起し続ける。これが結果として、その企業ならではのイノベーションを生んでいける。
 
最近注目しているのが、インクルーシブという概念です。消費者側は、自分が意義を感じる事業や共感する製品・サービスを応援するというお金の払い方をしている。そして、株式市場のESG投資の流れにより、企業経営者も「自分たちの社会意義」を意識する環境が整ってきました。企業が、社会の分断に対して、社会課題を解決するプラットフォームであることを提案し、結果的に様々な企業や消費者を巻き込み、そこで共に社会を動かしながら事業自体の価値を育んでいくことがこれからの大企業の役割になるのではないでしょうか。
 
デザイン領域でも、ジョン・マエダ氏が18年のDesign in Tech Reportで「インクルーシブ・デザイン」の必要性を提起し、注目を集めています。彼は世代や貧富を超えた包含する仕組みやサービスをいかにテクノロジーの土台を使ってデザインするか、を提起しています。AIや、ブロックチェーンなどの技術は、大義に基づいたルールをスケールする仕組みの構築に使えます。
 
一方で、技術が場の力を広げられる時代だからこそ、「直接参加型で大義を語り、信頼を醸成する場」「共通のルールをつくる場」の存在がより重要になります。ルールもビジョンも1回つくるのではなく、何度も書き換えられてアップデートしていく。そうした参加型でビジョンやルールをデザインする場を設計し、テクノロジーを掛け合わせていきながら、社会を巻き込んでいく、そんな未来をつくれたらいいなと思っています。

佐宗邦威◎biotope代表取締役。P&G、ヒューマンバリュー、ソニーを経て、独立。ソニーの「SAP」立ち上げをはじめ、大企業から老舗企業まで様々な企業のイノベーション文化の創造やプロジェクトプロデュースを得意にしている。著書に『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』。

文=Forbes JAPAN編集部

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