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シネマの女は最後に微笑む

(左から)ニック役 アネット・ベニング、ポール役 マーク・ラファロ、ジュールズ役 ジュリアン・ムーア(Duffy-Marie Arnoult / gettyimages)

月刊誌『新潮45』8月号に寄稿された自民党衆院議員、杉田水脈氏のテキスト「『LGBT』支援の度が過ぎる」が、先月から波紋を広げている。

特に「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」という文面が、差別であると同時に優性思想につながる危険な考え方として、各方面から大きな批判を呼んだ。

海外のメディアもこれを大きく報じ、7月27日には自民党本部前で同議員の辞職を求める大規模な抗議集会が開かれ、ついに自民党は8月2日、「問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」として、杉田氏を指導したとの党見解をホームページに掲載した。

「誰かと家庭を作り子どもを産み育てたい」「日常生活を共にし、老いても支え合うパートナーが欲しい」という願いは、セクシュアリティを問わず広く存在する。

州によって法律の異なるアメリカでは、同性婚し、養子縁組みや精子提供あるいは代理母などによって得た子どもを育てるゲイ、レズビアンのカップルも多い。異性愛者でも同様にして子どもを持つ人はいるので、同性愛者だから子どもを作らないとはまったく言えないのだ。

今回は、そんなレズビアン・カップルの家族を描いて、アカデミー賞の幾つもの部門にノミネートされた『キッズ・オールライト』(リサ・チョロデンコ監督、2010)を紹介しよう。


キッズ・オールライト」監督のリサ・チョロデンコ

監督自身もレズビアンで家庭をもっており、「同性愛者の家庭では子どもはうまく育たない」というキリスト教系の保守派の意見に対抗するべく、この作品を撮ったと言われる。原題はThe Kids Are All Right(子どもたちは大丈夫)。

ふたりの「ママ」と娘と息子

ニック(アネット・ベニング)とジュールズ(ジュリアン・ムーア)はレズビアンの中年カップル。精子バンクから購入した同じ男性の精子で妊娠しそれぞれが生んだ子どもは、大学進学を控えた18歳の娘ジョニと、15歳の息子レイザーだ。

年頃になり、自分の父について知りたくなったレイザーは姉のジョニに相談、彼女は精子バンクに連絡を取り、ママたちには内緒で二人だけで、精子提供者であるポールという男性に会いに行く。ポールは共同農園で野菜を作り、オーガニックレストランを経営する40代。顎髭を蓄え日に焼けたマッチョでセクシーなタイプで、若い恋人がおりバイクに乗っている。いかにも自由気ままに生きてきたといった感じの中年オヤジだ。

緊張する子どもたちにフレンドリーに接するポール。ワイルドな風貌と親しみやすい人柄にジョニもレイザーも魅了され、時々連絡を取り合うことを約束するが、早速親にバレてしまう。

子どもたちがポールに会いに行くことに、ニックとジュールズは当初懸念を示す。ポールは単なる精子提供者であって今は無関係、自分たち二人だけが、子どもたちの実質的な親だ。

二人とも「ママ」と呼ばれているが、ショートカットでズバズバとものを言い、病院で医師として働くニックは明らかに男性ジェンダーが強く、家庭では父親的な立場にある。一方、今は主婦で景観デザインの仕事を始めたいと思っているロングヘアのジュールズは、女性的、母親的と言えるだろう。

つまりレズビアンのカップルだが、その家庭内の役割はわりと伝統的な夫と妻であるように見える。

文=大野左紀子

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