杭州の複製パリタウンを訪れて知る、中国人の「意識の変化」

エッフェル塔やシャンゼリゼ通りの周辺は中国人観光客であふれているが、ここはパリではありません



ここにはカフェはなく、中華料理店のような飲食店や商店などのテナントの入った1階を除くと、基本住居である

どれだけの住人がそのように感じているかはともかく、今日、多くの中国の人たちは、前回のコラムで触れたオープンキッチンの例がそうであるように、かつての盲目的な西洋崇拝に陥っていた自分の姿に対する「後悔」の念を抱えているようだ。

それでも、この街にはかつては見られなかった新しい光景もある。ベビーカーを押す若い夫婦が近づいてきたので、見ると奥さんは妊娠していた。この10年の間に、1人っ子政策は終了し、2人目を生むことが可能な社会になったのである。

無印良品に対する評価が高い

中国の地方都市では、依然として、まだ盲信的な西洋志向はいくらでも見られるが、少なくとも上海のような大都市圏の人たちはそうではない。そうした意識の変化は、彼らの自宅の内装の好みやトレンドに、どんな影響を与えているのだろうか。

中国で開発コンサルタントをしている中倉伸顕さんは、「最近では安心と安全、デザイン重視、そして性能が消費者のキーワード。若い豊かな世代が育ってきたので、自分たちの好みで商品を選び始めています。デザインの傾向としては、明るめでナチュラル。こうした背景には海外ドラマの影響が大きくあり、そこで描かれるライフスタイルへの憧れがあるのです」と分析する。

こうしたなかで、最近、日本の無印良品に対する中国の消費者の評価がとくに高まっているという。「シンプルでおしゃれなことが人気の理由です。日本では『MUJIでいいや』という感じですが、中国ではむしろ積極的に支持されています。あれほど広範囲に生活商品を揃えている店はないからでしょうね」と中倉さんは話す。

中国人の自宅の内装の好みは、見た目ゴージャスから、シンプルでおしゃれな志向に変わりつつある。こうしたトレンドを導いているのが、海外のライフスタイルを紹介する情報サイトの存在である。

なかでも「一条」(http://www.yitiao.tv)や「好好住」(http://www.haohaozhu.com/)は広く知られている。これらは中国版ブログの「ウェイボー」やSNSの「ウィチャット」、動画サイト、APPと複数のプラットフォームで情報発信をしているが、多くの人たちはスマホのアプリで見ている。

さまざまな商品広告とともに、ハイセンスなユーザーの自宅の内装事例の紹介なども豊富にあり、盛んに情報交換も行われている。こうしたやりとりをつぶさに見ていると、いまの中国の人たちが何を考え、どんな生活を望んでいるのかがリアルに伝わってくる。

連載 : ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
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文・写真=中村正人

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