週の半ばには、同社の最高経営責任者(CEO)が立ち寄り、従業員との討論会を開催して質問に答え、有益な情報を共有した。そこでCEOは、24人の従業員を大事にしていることを、各自に対し個人的に示した。
彼はどのようにして、マネジャーたちと意義のあるつながりを築いたのか? 実は研修に立ち寄る数日前、CEOのアシスタントが診療所マネジャー全員の写真と名前、重要情報(息子・娘の卒業や最近手掛けた手術、仕事での大きな達成事項など)を文書にまとめていたのだ。CEOは会場に着く前にその情報を全て暗記したため、会場では全員に名前で呼びかけ、各自の生活について尋ねることができた。
これには時間と注意力が必要だが、価値のある取り組みだった。参加者は、自分が本当の意味で大切にされていることを感じたからだ。
このCEOが求めていたのは結果であり、最終的な目標は会社の成長だっただろう。しかし、その場で彼が注力していたのは、チームのことを大事に思っていると伝えることだった。これこそが、リーダーとしての役割でもある。
結果や売り上げ、顧客の数で良いリーダーかどうかが決まるわけではない。こうした指標は全て独り善がりなものだからだ。自己陶酔型の管理職が良くないことは、誰もが理解している。「ビジネス倫理ジャーナル(The Journal of Business Ethics)」に2016年に掲載された論文は、自分の下で働く従業員を大切にすることを良いリーダーの定義としている。リーダーは誰しも、部下を大事にしていることを伝えるべきだ。しかしそれは言葉だけでなく、行動でも示さなければならない。
従業員が職場を安全だと感じ、自分らしく振舞っても大丈夫だと分かると生産性が上がる。従業員が、懸念事項や強み、弱み、創造性を仕事に持ち込んでも大丈夫だと分かっている状態だ。
従業員を大切にすれば、従業員エンゲージメントも変化する。従業員が上司に求めるものに関して米調査会社ギャラップが実施した調査によると「上司にどんなタイプの質問でも尋ねられる」と強く感じていた従業員は54%が仕事に熱意を持っていた。一方で、全くそう思わないと回答した従業員の間で仕事に熱意を感じていたのはわずか2%で、65%はやる気が大きくそがれていた。