本特集では、「Business Entrepreneurs(起業家)」「Social Entrepreneurs(社会起業家)」「The Arts(アート)」「Entertainment & Sports(エンターテイメント&スポーツ)」「Healthcare & Science(ヘルスケア&サイエンス)」の5つのカテゴリーを対象に、計30人のUNDER30を選出。
選出にあたって、各カテゴリーに第一線で活躍するOVER 30を迎え、アドバイザリーボードを組織。彼らに選出を依頼した。
今回、「The Arts」部門のアドバイザリーボードのひとりに、スマイルズ代表取締役社長の遠山正道が就任。自身の20代のころを振り返ってもらった。
遠山は、1999年に「スープストック トーキョー」の第一号店をお台場にオープンした後、2000年にスマイルズを設立。起業家でありながらアーティスト、コレクターとしての側面をもち、アートにまつわるプロジェクトも鋭意準備中の遠山。マジシャンを本気で目指していたと語る、自身の若き日々の思い出から次世代へ伝えたいメッセージを聞いた。
スマイルズの根底には、マジシャンの思想があった
小さいころ祖父の家へ遊びに行くと、よくトランプで遊んでいました。当時の私は、映画『スティング』みたいなギャンブラーに憧れていたから、渡されたトランプを使って、よくひとりでカードさばきの練習をしていたんです。小学5、6年生のころになるとかなり上達していました。友だちの前で腕前を披露すると、けっこう驚かれてすっかり味をしめてしまった。そのまま手品の世界にハマって、高校では奇術部の部長もやってました。
以前、社員から「遠山さんのやることは手品っぽいですよね」と言われたことがあります。後から考えると、自分でも思い当たるフシがあるんです。手品を披露することはもうないけれど、思えば今やっていることとつながっている気がするなと。
マジシャンの世界には「サーストンの三原則」とよばれるものがあります。三原則とは「これからすることをあらかじめ説明するな」「同じマジックを繰り返すな」「タネは絶対に明かすな」の3つ。これ自体は、手品をより楽しんでもらうためのルールですね。
これって、すごく素敵な感覚だと思います。秘すれば花というか、相手の要望がまずはあって、そこに合わせて自分の能力を発揮するのを基本とする考え。BtoCのビジネスも、そうあるべきじゃないか。自ら大きな声を出して言うのではなく、何らかの要望を持ったお客様がお店にいらしたら「こちらはいかがですか?」と自信あるものを差し出す。そんなかたちで私たちは店を展開しています。広告を一切しないのもそんなところから来ているのかもしれない。