クルマの聖地のパドックに姿を表したトヨタの新型スープラと日産GT-R50 by イタルデザインは、何万人ものファンの注目が集まる中、この会場の名スポットである坂道「ヒル」を全開で駆け上がっていった。
敷地内の道路を走る姿が一般人に公開されたのは、スープラ(A90というコード番号付き)もGT-R50もこれが世界で初めて。でも、そういうサプライズこそ、このフェスティバル・オブ・スピードならでは。英国貴族の中でも社交的で人気の高いマーチ卿がその領地で始めたフェスティバルは、今年で25年目となる。
東京・世田谷区にほぼ等しい広大な土地で催される「フェスティバル・オブ・スピード」は、今では地球上でもっとも来場者が多く、影響力のある自動車の祭典となっている。今年は25周年記念祭とあって、週末4日間で20万人が集まった。
毎年ここには世界のカーメーカーが、選りすぐりの車を運び込んで来場者を楽しませる。そして、マーチ卿の館を撫でるように伸びる約2キロの坂を、気持ちよいエンジン音を響かせながら駆け上がるヒルクライムを展開する。充満する車の魅力を謳歌する観衆の前で、カーメーカーが最新かつ未来的なマシンを初披露するチャンスだ。
そこには、脂の乗ったレーシングドライバーや歴代のレジェンド、セレブリティが顔をそろえる。ル・マン24時間レースで5回の優勝を誇るデレック・ベルや、ピンク・フロイドのドラバー、ニック・メイソンはこのフェスの常連だ。
そんなグッドウッドで、今年トヨタは珍しい企画を立てた。会場に近い秘密の場所に、旧スープラのオーナーとファンの中から特別に数百人を招待し、新型スープラを披露。その翌日には、多田哲哉チーフ・エンジニアがバッチリとカモフラージュしたクーペに乗り込み、エギゾースト音を聞きたくてたまらない観客が目を見張る中で、件の坂を爆走していった。
3月のジュネーブショーで新型コンセプトを披露したトヨタの多田哲哉チーフ・エンジニア
はたして、スープラのエンスー達は、満足したのだろうか? 何人かに聞くと、「なかなか良い。低音が効いた、乾いたような音がたまらない」との答えだった。つまり、みんな大満足ということだ。これが市販車になることでどう修正されるかは、来春の発売まで待たなくてはわからないけどね。
BMWと共同開発した新スープラは、BMWが開発した3L、6気筒ターボ・エンジンを搭載し、ほぼ340psで8速A/Tとの組み合わせ。また2L、4気筒のタイプも発売になるようだ。