同氏は、IDEディレクターのエリック・ブリニョルフソンMIT経営大学院教授とともに、ベストセラー『機械との競争』や『プラットフォームの経済学』などを出版。2016年1月には、スタートアップやNPO、政府機関を対象にしたインキュベータープログラム「MITインクルーシブ・イノベーション・チャレンジ」(IIC)を立ち上げ、テクノロジーによる「包摂的な」社会の構築を目指す。マカフィー氏に話を聞いた。
──なぜIICを始めたのですか。
イノベーターや起業家がテクノロジーを用い、働く人々のビジネスチャンスを高めようとする試みをたたえるためだ。
昨今、テクノロジーをめぐる報道や人々の対話はネガティブになりすぎている。テクノロジーによって、働く人たちが、チャンスやスキル、金融システムへのアクセスを手に入れ、仕事を見つけられるような社会にすべく奮闘している組織や起業家がいることを認識すべきだ。IICを始めたのは、そうした人々や組織をたたえ、支援したいと思ったからだ。
──でも、あなたとブリニョルフソン教授は、テクノロジーによる雇用喪失などについて、懸念を示されてきました。
テクノロジーによって置き去りにされている人々がいるという事実を示したかったからだ。一方、人々がスキルを身に付けたり、より良い仕事を見つけたり、金融サービスを受けたりする機会をテクノロジーによって生み出そうとしている組織が存在することも知ってもらいたい。
仕事が自動化される一方で、テクノロジーによって求人側と求職側のマッチングが向上したり、経済的恩恵を得やすくなったりと、多くの興味深いことが同時進行中だ。テクノロジーが職を奪うだけでなく、人々の助けになっているという事実やテクノロジーのポジティブな進歩をたたえ、世間の認識を軌道修正したい。
11年に(『機械との競争』で)こうした問題について書き始めたのは、テクノロジーが一部の人々にもたらす難題を提起し、世間の関心を呼び起こすためだった。だが、今や、テクノロジーをめぐる対話はネガティブに傾きすぎている。それを根拠や現実に基づくものに変えたい。
──IICの概要を教えてください。
今年、募集対象地域をグローバルに拡大し、日本などのアジアやアフリカ、中南米、欧州の組織にも門戸を広げた(*アジアは5月半ば、その他の地域も6月17日に募集は締め切られている)。
コンペには4つの部門があり、毎年、各部門から大賞を選出している。4つの部門、Skill Development & Opportunity
Matching(スキル開発・ビジネスチャンスのマッチング)、Income Growth & Job Creation(所得拡大・雇用創出)、Technology Access(テクノロジーへのアクセス)、Financial Inclusion(金融包摂)だ。各部門から複数のファイナリストを選び、部門ごとのグランドプライズを決める。