ビジネス

2018.08.06

冷戦からサイバー戦争へ 元CIA幹部が語る「今そこにある脅威」

世界の現代史を諜報側から見てきた"生き証人"に独占インタビュー


18年2月の上院情報委員会では、CIAとFBIなどが連名で、ファーウェイの製品について、「中国政府が悪意を持って情報を操作または盗むことができ、こちらに気づかれないままスパイ活動を実行できる」と警告している。 

なぜ米政府はファーウェイをやり玉に挙げたのか。その背景をケルトンが説明する。「中国やロシアは、諜報機関が集めた情報を政府系企業や国内企業に教えるよう命令し、彼らが優位にビジネスをできるようにしている」。

ケルトンはさらに、こう指摘する。

「ファーウェイが、ある国でインフラ工事を他社よりも安く入札し、その国の政府がファーウェイのシステムを購入したとしたら、ファーウェイや『その背後にいる存在』がインフラから情報を搾取することを想定しなければいけない」 

さらに、ロシアも自国を拠点とするセキュリティ企業を使ったサイバー攻撃を行っていた、という疑惑が出ている。

次世代通信規格5Gの世界では、データの通信量や速度が現在よりも飛躍的に伸び、現在の100倍とも言われる高速通信で多数同時接続が可能になる。

中国は今、この5Gのネットワークインフラの覇権を掌握すべく、国を挙げて注力している。ケルトンは、「じっと黙って見ていたらやられてしまう。5Gネットワークの時代にプライバシーや通信、情報を守るべく今動いている」と語る。

「今、彼らを止めるしかない」。そう語るケルトンに、自らの命を落としかけた諜報機関での仕事をなつかしく思うか聞いてみた。「もちろん。でも、良くも悪くも、私は死ぬまで諜報機関の人間であり続けるだろう」


マーク・ケルトン◎CIA幹部として防諜部門を率いた。2015年に退職。海外で通算16年間過ごし、パキスタン支局長などの要職を担う。ジョージタウン大学大学院の非常勤教授のほか、Blue Planet-works 顧問と同社子会社のTRUSTICA, Inc.の会長などを務める。

文=山田敏弘 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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