ビジネス

2018.08.06

冷戦からサイバー戦争へ 元CIA幹部が語る「今そこにある脅威」

世界の現代史を諜報側から見てきた"生き証人"に独占インタビュー


プーチン大統領誕生、サイバー空間での戦いへ

ケルトンがプーチンの大統領就任を目の当たりにしたのは、ロシアにチーフとして赴任した後のことだった。

かつて同じ東欧で情報局員として、敵と味方の関係にあった男が、国家権力を掌握したのである。同じ職業、同じ世界にいた人間として、その後報道されるプーチンの一挙手一投足に、ケルトンは同業者の匂いをしばしば感じ取らずにはいられなかった。

その後、欧州担当のトップに就任したケルトンは、テクノロジーを管理する責任者となった。これがサイバー空間に深く関わっていくきっかけとなった。

「私は科学技術専門家ではないが、CIAのコンピュータや工作道具などがきちんと機能するか、安全に使えるか、情報漏洩や盗聴から守られているか、などについて責任を負っていた。もちろん、サイバー工作も担当した」

欧州からパキスタンに異動して支局長になり、帰国後は、米国内で国家機密局の防諜担当副次官に就任。15年に退官した。

CIAの情報局員という立場から現代史を目撃し、テクノロジー部門やサイバー工作を仕切ってきたケルトンの目には、現在のサイバー空間はどう映っているのか。

「人々はインターネットが最近始まったものだと思っているかもしれない。だがサイバーは新しい世界ではない」と言い切る。

「データ収集の時間は短くなり、情報量も飛躍的に増えた。ただ時代は変わっても、道具が違うだけで原則は同じ。情報を収集し、情報を守ろうとする。諜報活動には、常に技術的な側面があり、諜報機関は早い段階からコンピュータや暗号など新しいテクノロジーを活用してきた」

現在も、CIAは諜報活動や妨害工作に使うテクノロジーの開発を続けている。

17年3月のリークによれば、CIAはiPhoneから情報を盗み、監視するマルウェアや、スマートTVを電源がオフの状態で盗聴器として機能させるツールまで開発しているという。

高まる中国やロシアの脅威

ケルトンは近年増大するサイバー攻撃について、ロシアと中国を名指しした。

象徴的なケースが、米国などで数年にわたって続く中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)にまつわるスキャンダルだ。つい最近、Facebookがユーザーのデータの一部を共有しているとして、批判を浴びる原因になった。

米連邦議会は12年、ファーウェイが中国政府のスパイ活動に関わっているとして国家の安全保障上の脅威だと名指した。
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文=山田敏弘 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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