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2018.08.04 15:00

最新の研究施設で生まれる「スーパー・スポーツカー」──McLaren 570S Spider

McLaren 570S Spider

「マクラーレン」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、22歳の若さでF1で優勝を飾った伝説のドライバー、ブルース・マクラーレンの生き様である。F1へのデビューを果たしたその年に初優勝を飾り、40年以上にわたって最年少優勝記録として輝き続けた。自らの名を冠したレーシング・チームを創設し、オーナー自ら駆るマシンでチームに勝利をもたらした。テスト中の事故で帰らぬ人となるが、その後を継いだロン・デニスが司令塔となり、レース・シーンでの栄光を勝ち取ってきた。

マクラーレンがF1での活躍に甘んじることなく、高性能の市販車を造るべく立ち上げたのがマクラーレン・カーズだ。鬼才、ゴードン・マーレイの手になるロードゴーイング・カー、マクラーレン「F1」をベースにしたプロトタイプでは、ル・マン24時間耐久レースで総合優勝するなど、“市販車”でも、レースで磨かれた遺伝子を受け継ぐ。

2009年に“自動車メーカー”としての歩みを確かなものとすべく、マクラーレン・オートモーティブと社名を改めて以降、フォーミュラ1の開発を行う最新の研究開発施設に加えて、ロードゴーイング・カーを“量産”する体制を整え、矢継ぎ早にニューモデルを発表し続けている。

頂点を担うアルティメット・シリーズの「セナ」が話題になったのは記憶に新しく、さらに中核を担うスーパー・シリーズ、エントリーを担うスポーツ・シリーズが揃うが、そのなかでも、オープン・トップを持つ「570Sスパイダー」には特筆すべきことが2つある。エントリーの位置付けであること、パフォーマンスの点で不利とされるオープン・ボディであること、そのどちらのイメージも瞬時に払拭する走りを披露する点だ。カーボン・モノセルを採用した軽量かつ高剛性のボディ、研究され尽くした空力、躾のよい7段トランスミッションといったレースで磨かれた技術は枚挙に暇がない。

最年少優勝ドライバーからチーム・オーナーへの転身、F1チームから自動車メーカーへの転身、そんなふうに「いい意味で期待を裏切る」ことこそがマクラーレンらしさだ。

McLaren 570S Spider

DATA
駆動形式:RWD
全長:4530mm
全幅:2095mm(ミラー展開時)
全高:1202mm
最高出力:419kW(570ps)/7500rpm
価格:2898万8000円(税込み)
問い合わせ:マクラーレン・オートモーティブ・アジア 03-6675-4313

最新鋭のテクノロジーとメーカーの歴史が共存 洗練を極める、マクラーレンを象徴するファクトリー

最新の研究開発施設で生まれるスーパー・スポーツカー。

これほど洗練された自動車工場を見たことがない。マクラーレン・テクノロジー・センターを訪れた正直な感想だ。ロンドンの玄関口であるヒースロー空港から南へ向かって30分ほど走ったサリー州ウォーキングののどかな景色の中に、突然、最先端の秘密基地のような建築物が現れる。



英国を代表するノーマン・フォスター卿が手がけたモダンな建築は、ただ眺めているだけでも独特の風情があるが、建物を囲む人工湖は、風洞実験などの研究開発施設から生じる熱を冷却するヒートポンプの役割を果たすなど、実に機能的に設計されている。建物内に一歩足を踏み入れると、自動車工場とは思えない真っ白なフロアが広がり、歴代のF1マシンをはじめ、マクラーレンの歴史に彩られたエリアと、最先端の開発施設がひとつの調和された世界の中に共存している。

text by Yumi Kawabata edit by Tsuzumi Aoyama photograph by Tsukuru Asada(secession)

この記事は 「Forbes JAPAN 「全員幸せ」イノベーション」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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