ビジネス

2018.07.31

アマゾンが決算で語らなかった「アレクサの企業活用」の威力

アマゾンCEO ジェフ・ベゾス(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

アマゾンは7月26日、第2四半期決算を発表した。クラウドコンピューティングサービス「AWS(Amazon Web Services)」が引き続き好調で利益は大きく拡大したが、今回の決算の主役はAIアシスタント「アレクサ(Alexa)」だった。実際、アマゾンの決算発表プレスリリースには、アレクサの名前が31回も登場する。

CEOのジェフ・ベゾスは、リリースの中で次のように述べている。「我々は、顧客がどこにいてもアレクサを使えるようにしたい。現在、150以上の国で数万規模の開発者がAlexa Voice Serviceを使って新しいデバイスを開発している。アレクサ対応デバイスの数はこの1年で3倍以上に増えた。我々のパートナーは、幅広い種類のアレクサ対応デバイスやユーザー体験を作り出している」

アレクサとAWSが組み合わされば、アマゾンにとっては最強の稼ぎ柱になることは間違いない。今や、アレクサ対応のスマートスピーカー「アマゾンエコー(Amazon Echo)」は、1万3000を超えるスマートホーム機器をはじめ、フォードやトヨタなどの車両とも連携し、一般消費者の間で急速に普及している。アマゾンが次に狙うのがエンタープライズ市場で、11月にはAWSアカウントを持つ顧客向けに「Alexa for Business」をリリースした。

AWSの顧客である製薬大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン」は、アマゾンと協業したり社内ハッカソンを開催し、会議室の予約や会議の設定といったアレクサの活用方法を検討している。

ジョンソン・エンド・ジョンソンでEnd User & Public Cloud Services担当のバイスプレジデントを務める Keith Blizardは、ニューアークで開催された「Voice Summit」に登壇して次のように述べた。

「音声は我々にとって未開拓の領域だ。これまで会議の開始時に生じていた10分の無駄を排除し、生産性を向上するにはどうしたら良いか検討している」

Blizardによると、手がふさがっていることの多い科学者や医者にとってもアレクサは有効であり、他にもヘルプデスクへの問い合わせ件数を削減することにアレクサを活用したいという。アマゾンでAlexa for Business部門のゼネラルマネージャーを務めるCollin Davisによると、アマゾン社内でも700以上の会議室でアレクサを導入しており、会議の70%はアレクサを使って開始しているという。

将来を左右する「Alexa for Business」

アマゾンエコーを多くの家庭に普及させことも重要だが、アレクサに課せられたより大きな使命はAlexa for Business導入企業を増やすことだ。AWSが「プライムデー」のように世の中の注目を集めることはないかもしれないが、アマゾンにとっては利益の柱だ。AWSのお陰で配送の迅速化など様々な新しいプロジェクトに投資をすることが可能なのだ。

アマゾンの第2四半期の配送コストは前年同期比31%増の60億ドル(約6600億円)で、純利益で計上した25億ドルの倍以上となった。これに対し、AWSの売上高は前年同期比49%増の61億ドルで全体の11%を占め、成長率では最大規模を誇る北米事業を上回った。AWSの営業利益は16億ドルで、全体の半分以上を占めた。

営業利益率を見ると、AWSは27%と前年同期から5ポイント改善したのに対し、総売上の6割を占める北米部門の営業利益率は5.7%とはるかに低く、海外部門にいたっては今四半期も赤字だった。

こうしたことからも、AWSがアマゾンにとって金の生る木であり、AWSの成長をさらに加速させることが可能なAlexa for Businessの普及が同社にとって極めて重要であることがうかがえる。

編集=上田裕資

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