現在、パトレオンでは200万人以上のユーザーが、約10万人のアーティストを支援している。キックスターターやインディーゴーゴーなどの他社のクラウドファンディングサイトではアーティストは1回限りのキャンペーンに頼らざるを得ないのに比べ、パトレオンでは事前に分かっている金額を毎月受け取ることができる。
ある意味、パトレオンの成功はロジックに反する。1ユーザーあたりの平均寄付額は月に12ドルで、膨大な数のビデオや楽曲にアクセス可能なスポティファイやネットフリックスの月額基本料よりも高い。
パトレオンの手数料は当初より変わらず、各寄付の5%。キックスターターやインディーゴーゴーと同等だが、ユーチューブ(45%)やアップル・アイチューンズ(30%)の売り上げシェア・プログラムよりもはるかに低額だ。
「我々のミッションは、できるだけ多くの金額をクリエイターたちへ届けること」と、コンテは言う。パトレオンの昨年の手数料収入は、約800万ドルに上る。クリエイターは無料で登録でき、独占契約を結ぶ必要もない。
今のところパトレオンは、既にファンを持つが、一般的にはまだ名の知られていないクリエイターを対象としている。将来的にはビッグネームをサポートし、インターネットによって大きく蝕まれてきたコンテンツ・クリエイターたちを、テクノロジーが金銭的にサポートできることを証明したい、とコンテは言う。
パトレオンのアーティスト第一主義によって利益を得るクリエイターもいるだろうが、デジタル・ビジネスモデルが頻繁に変化する分野には落とし穴もある。
「クリエイターは、突然援助が打ち切られないように、できる限り収入を多様化する必要がある」と、インターネット・クリエイターズ・ギルドのエグゼクティブ・ディレクターのローラ・チャーニコフは言う。
コンテは今、成長のための機会を窺っている。まずは海外対応。現在のサイトは英語のみで、取引は米ドルで行われている。しかしパトレオンの40%は米国外からのユーザーだ。長い間、もっとワクワクできる機能を考えてきた。例えば、バーチャル・リアリティ・コンサートなどだ。さらに、チケット・サービスや小売りなどをサポートするアイデアもある。
コンテは断言する。「これからはアーティストが飢え死にすることはない」。