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SNSマーケティングを社会学的に考える


最後の濱野さんの指摘は、とても大切で、インターネットを利用する人々=私たち全員が現在進行形で直面している課題です。ともすれば、トラフィックとビジネスとが過度に結びついてしまう一部のインターネットメディアに顕著なように、人々の不安を掻き立てたり対立をフレームアップしたり…そんな煽情性によってユーザーのアテンションを得ようとする世界が広がっているのも事実だからです。

そして、そのとき言葉は「分断」を促進してしまう効果もあるでしょう。言葉はものごとを分化し、差異を明確にするものだからです。けれど、ビジュアルコミュニケーションはもう少し違うレベルでの人と人との結びつきを生んでくれるかもしれないということに濱野さんの考察で思い至ります。

インスタグラム上で仮想的な育児コミュニティがハッシュタグを通じて生成されていることの素晴らしさは、誰にとっても初めての体験で不安が心に広がってしまうような場面で、正しい情報が得られるということももちろんですが、それ以上に同じ立場の人たちがいることの安心感や、さらには前に進んでいくための勇気のようなものがそこでは醸成される余地があることに求められるでしょう。

子育ての場面はもちろん、これはそれ以外の人生の様々なフェーズにおいても大切なことのように思われます。私たちはSNS上でなにをシェアしているのか、さらにはなにをシェアすることができるのか、それを深く捉え直す契機に満ちていると感じます。

よくある「インスタグラム(などのSNS)を使ってたくさん拡散させたい」という効率論。その一方で、自分が楽しんでやれればOKというクローズドな情報発信のありよう。どちらも、SNSという場をめぐる二極化のジレンマとして、私たちが陥りがちな罠です。しかし、濱野さんのエピソードからくみ取るべきは、その両者のあわいとしてのSNSの可能性ではないでしょうか。

私たちのシェアは単なる「情報拡散」にとどまらず、ひとりひとりのリアリティにアクセスすることで開かれる共感とつながりの生成をもたらす実践に他ならないのです。

連載:SNSマーケティングを社会学的に考える
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天野彬

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