車はモビリティから、コミュニティへ ぼくたちのバンライフ

富士吉田に約1カ月半滞在。毎日陽の光とともに起き、窓越しから富士山を眺めていた─




面白い人たちが集まるのは、物語をつくるぼくたちのようなサービスにとって最高のコミュニティだ。現地の人だけでなく都心からわざわざバンに遊びに来てくれる友人もいる。その友人と地域の人がつながる場所としてバンが機能するとき、コミュニティであると強く感じるのだ。

さらに、旅も終盤をむかえると地元の人たちに地域を案内することもある。たとえば、どこの食事やさんが美味しいか、お風呂の良さ、知られざる観光スポットとそこにある物語など。そしてこのゲストとホストの奇妙な逆転関係になった時、お互いの信頼関係もより一層深くなりぼくたちの旅の体験も深くなっていった。

移動する人にしか、真の情報は集まらない

自動運転が発展していく未来では、車を家やオフィス、コミュニティの場として使うケースが増えていくと思う。各地域には車を停められるハブステーションができ、そこには電源バッテリー、お風呂やトイレ、コインランドリーに冷蔵庫など生活に必要なアウトソーシング先が配置されていく。そのステーションの周りに様々なバンが集まっては離れ、それぞれが旅するように暮らしていく。



ネットを通して情報がどこにでも手に入るからこそ、移動してリアルを感じたい人はさらに増えていくだろう。ニュースは都合のいい情報で溢れているし、そもそもマスメディアを鵜呑みにできるほど楽観的な人も多くない。

それに、世の中には目に見えないものが多い。大切なものであればあるほどに。たとえば、メールだけのやりとりではなく直接会わないと気が合うかなんてわからない。その場所の雰囲気が好きか否かだってそう。

真の情報とはその言葉通り情けに報いることであり、自分の足でたどり着いた人こそ手に入れることができるもの。そして自分で見つけた情報は、あなただけの物語になっていく……。

バンで移動して、自らリアルを体験して物語を紡ぎ、各地域で人が集まるハブとしてのバンライフはこれから増えていくだろう。少なくともぼくたちのバンは、そうでありたい。

富士吉田を離れ、次の滞在地は、3年に一度開催される「大地の芸術祭」。ここでON THE TRIPのバンを展示することになった。場所は越後妻有里山現代美術館[キナーレ]の駐車場。国内外のゲストが集まる芸術祭で、どんなコミュニティの場になるのか今から楽しみだ。


7月27日、バンは越後妻有里山現代美術館[キナーレ]の駐車場に到着

連載 : あらゆる旅先を博物館化する
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文=成瀬勇輝

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