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2018.07.27

IR実施法案は成立したが、日本のカジノはすでに座礁寸前か?

welcomia / Shutterstock.com


マネロン対策を怠ると命とりに

依存症の問題も大事なことではあるが、実はそれ以上にIRにとって重要なのは、マネーロンダリングの問題だ。今日、日本はマネロン対策が不十分で、エラーも多い。平和な日本にいると、国際テロになかなか関心が向かなくてもあたりまえだが、マネロンは単に暴力団やオレオレ詐欺のツールではなく、テロ活動にも直結する。

国際テロの資金洗浄に使われ、世界紛争の行方さえ左右する。マネロン対策に甘い産業は国際テロに利用される。そしてこの産業のおかげで欧米はひき続きテロに見舞われ、市民が命を落とす。

カジノほどマネロンに狙われる産業はない。だからこそ強い規制を発動し、断固たる態度と法制度で臨まない限り、ここで失敗すると、参入したラスベガスのカジノ業者は本国でのライセンスさえ失いかねないという恐怖にさらされるのだ。

日本のカジノが目を光らすポイントがずれたままだと、ラスベガスのカジノ会社に彼らの条件をつきつけられ、飲まない場合には撤退を余儀なくされるというリスクさえある。

いいニュースがあるとすれば、安倍総理が一貫してITを世界最高レベルでカジノに持ち込むことを主張していることだ。マネロンとは金融の問題であったが、フィンテックや仮想通貨の台頭で、金融とITは近年強烈に親和性を高めている。

一例では、ラスベガスの子会社がカジノの電子決済を開発しているテックファーム株式会社(東京)は、カジノマネロン対策の調査レポートの販売を始めたし、大手電機メーカーのA社はカジノでのセキュリティカメラによる自動顔認証システムの開発を進めている。

日本のカジノは、このままでは座礁寸前だと見る。来月から本格的な規制整備と業務委託交渉が始まっていくはずだが、いち早くカジノを理解したITのプロを議論に加え、カジノ依存症もマネロンもITで超えていくことを世間に納得させ、3%の上限とか30%の納付金などという、非常識な「悪者扱い」を早くやめさせることである。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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