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文京区にある桜の名所、播磨坂。夏には鮮やかな緑が生い茂り、閑静な住宅街のなかのオアシスのよう。小石川植物園にもほど近いこの場所にモリッツ・グロスマンのブティックはある。


高級時計のブティックといえば、ラグジュアリーブランドの名がずらりと立ち並ぶ目抜き通りにあるのが常。ところが、2015年2月に世界ではじめてのブティックを開設した「モリッツ・グロスマン」は、東京・文京区の静かなこの場所を選んだ。

ドイツの時計産業における2大産地のひとつである、グラスヒュッテ。19世紀にこの地の時計作りの発展と技術の向上に大きく貢献した時計職人のモリッツ・グロスマンは「シンプルでありながらも機械的に完璧な時計」を追求した人物。1878年設立のグラスヒュッテ時計学校の初代校長でもあった。

1885年に彼が没するとともに眠りについた銘を受け継ぎ、2008年に女性時計師でありグローバル・マーケティングに知悉するクリスティーネ・フッターが「グロスマン ウーレン社」を設立し、名門マニュファクチュール「モリッツ・グロスマン」は再興された。

8割以上の部品は自社で内製、伝統的な手仕事による時計作りにこだわる「モリッツ・グロスマン」。シンプルにして、最新の技術とグラスヒュッテの手仕事が融合する優れた時計を販売するブティックを作るにあたり、どのようなコンセプトが掲げられたのか。モリッツ・グロスマン ジャパンの代表を務める工藤光一さんに聞いた。

「世の中に錚々たるブランドがあるなかで、モリッツ・グロスマンは新参のブランドでありまだ名前は知られていません。現在注目を浴びているような装飾性の高い時計と比べると、ルックスはトラディショナルで大人しい。それでいて、ものの作りは素晴らしい。それを表現できるようなブティックにしたかったんです」

かつて数々の高級時計ブランドで働き、ラグジュアリーを知り尽くした工藤さんをして「ものづくりの確かさは世界一といってもいい」と言わしめるモリッツ・グロスマンだから、そのブティックにはドイツに由来するアナログの最高峰の機械を集めたという。



たとえば、坂本龍一さんも愛用するムジークエレクトロニクガイザインのアクティブスピーカー。モリッツ・グロスマンの本社があるグラスヒュッテと同じザクセン州のライプツィヒで、東ドイツ時代から作られてきたスピーカーだ。

かつては世界中のレコーディング・スタジオで使用されたオープンリールテープレコーダー、スチューダーのA80、ミキサーはA779、そしてCDプレイヤーも同社のD730を揃えた。そんな最高峰オーディオから流されるBGMは、天井高7m、100㎡の広々としたブティックをまるでコンサートホールのように満たす。

かつて印刷工場だった建物をリノベーションしたことにちなみ、奥まったスペースを活用してハイデルベルグ社のプラテン活版印刷機を置く。



「時計のクオリティーを表現するために“本物”を置きたかったんです。お客さまにいちいちすべて語らずとも、アトモスフィアとして感じていただけたらよいかと考えています。

さらに、オープンのときにはなかったものですが、ドイツのレンツキルヒ社のクロック。振り子部分をグラスヒュッテ製の温度補正タイプに改造してあることで、今でも高い精度を保っています。100年以上前に作られたクロックが正しく動いているのは日本ではなかなか見られないものだと思います」



クロックの隣には大きな姿見。頭から足元まで、全身がしっかり映るものが必要だったと工藤さんは言う。腕時計を身に着けたときのバランスは、上半身や手元だけを見るのではなく、全身で見なければならないというのがその理由だ。

その他、ブティックには時計のパーツを標本のように小さな木箱に収めたものや、グラスヒュッテで実際に使われていた工作機械、あえて磨きをかけずアンティークの風合いを残した小ぶりの旋盤など、時計に関わるオブジェが自然に配置されている。

広いブティックではあるものの、ディスプレイされている時計は20本に満たない。そこにも工藤さんのこだわりがある。

「もともと、ヨーロッパの高級時計のブティックではあまり外に商品を展示しません。しまっておいて、お客さまとコミュニケーションして出していくのが本来の接客なのです」

時計を購入するお客さまの滞在時間は長く、2時間ほど時計を見ながら話をしていく方も多いという。何度か通い、その後に購入するのが基本だ。来店して半年後、1年後に購入のために来店する方も珍しくないという。接客スペースで顧客正面の壁には版画家のエリック・デマジエールがパリの国立図書館を描いた作品が展示されており、遠近法の構図は時計を見たあとに目を休める効果を求めた。



目まぐるしく流行が移り変わる賑やかな場所からは距離をとり、モリッツ・グロスマンの時計を求める顧客ひとりひとりと向かい合い、その人のための時計をそっと提案する。

2010年に最初の時計が誕生したばかりの新生「モリッツ・グロスマン」は、いまや時計愛好家たちの間では高く評価されているが、その足取りは着実でオーセンティック。そんな姿勢もまた、好事家たちの心を捉えて離さない理由のひとつといえる。



NEW WATCHES



(上)「研ぎ澄まされた完全性」という原則のもと生み出されたアトゥム・シリーズの新作、「アトゥム 37」。直径37mmのケースに配されたローマ数字のインデックスが、クラシックな時計の普遍性を強調。ケースは18KRG、18KWGの2種類。価格は税別で320万円。2018年9月末まで日本限定のスケルトン加工のドロップ型針の特別仕様も用意。

(下)ブランドのファーストモデルであるベヌー・シリーズに、均整のとれた直径37mmのモデルが登場。1930年代の腕時計からインスピレーションを得てデザインされたアラビア数字に洗練が漂う。こちらもケースは18KRG、18KWGの2種類で、価格は税別で320万円。2018年9月末まで日本限定のスケルトン加工のドロップ型針の特別仕様も用意。



播磨坂の桜並木と調和するように、グリーンウォールで彩られたシックなファサード。黒の格子もまたクラシカルな趣きでゲストをモリッツ・グロスマンの世界へと誘う。

住所|東京都文京区小石川4-15-9
電話|03-5615-8185
定休日|日曜・月曜
営業時間|11:00-19:00

問い合わせ
モリッツ・グロスマン
www.grossmann-uhren.com

Promoted by モリッツ・グロスマン ジャパン Photograph by Shunichi Oda  Edit by Tsuzumi Aoyama

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