ビジネス

2018.08.21

組織の成長のために必要な「再現性」と「環境づくり」

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1+1は2以上になるのか。数学ではもちろんあり得ないが、組織ではよく引き合いに出されるたとえだ。

会社という組織になると、1人では成し遂げられないことが実現できる。効率的な分担によって量の拡大が可能になり、1人では思いつかない発想を形にすることもできる。ただし、その逆も起こり得る。「他の人がやるからいいや」と人任せにしてしまったり、組織内のいがみ合いでバラバラに動いたりすると、組織力は発揮されず弱体化していく。

マネジメントで「再現性」を高める

組織力を発揮するうえで欠かせないのが「マネジメント」だ。「手」を意味するラテン語の「manus」が語源で、「すべての資源を効率的かつ効果的に使う」「うまくやる、どうにかする」という語感が含まれている。

経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われるが、せっかくいい“資源”を持っていても、それを使いこなせないといい効果は出せない。マネジメントを担う管理者は、このことを意識する必要がある。

人事視点から考えると、マネジメントの強化は「再現性」を高めることになる。マネジメントの基本は平準化・標準化であり、PDCAを個人レベル・組織レベルできちんと回していけることだ。

ビジネスの世界では予定通りにいかないことも多いが、そのような時にも的確に対応できるマネジメント体制があれば、複雑性への対処が可能になり、組織の安定性と持続性の維持がなされるようになる。組織に一定の“資源”があるけれどもイマイチ成果が出ていないとしたら、マネジメント力向上がカギを握っているとも言えるだろう。

環境がリーダーをつくる

組織力発揮にもう一つ欠かせないのが「リーダーシップ」だ。リーダーシップは特定の人に備わっているものではなく、全員がそれぞれの持ち場で発揮していくものだ。ただし発揮の仕方は個々の特性により異なってくる。

変化する環境の中で特に求められるのは、変革型リーダーシップの発揮だろう。困難な状況下でもメンバーを束ね、人々の共感を得ながら協働を促す力が、変革リーダーには求められる。

リーダーシップ論の研究によると、変革リーダーの多くは「経験を通じて一皮むけ、大きく成長している」のが特徴だ。その輩出に向けて人事・会社が行うべきことは「環境づくり」と言えよう。

松下幸之助氏が「金魚を飼うのに、金魚ばかり考えて水を軽視したら、金魚、すぐ死んでしまうがな」と話した言葉が残っているが、環境次第で人は良くも悪くもなる。どれだけその人が“化け”られるか。その期待を込めて環境をつくってあげるのが、どんな育成施策よりも効く場合がある。

どんな施策であれ、放っておくと手段が目的化して、目先の成果だけを求めがちになる。しかし特に人事領域においては、何がKGIで何がKPIか、俯瞰して捉え続ける必要がある。たとえば人の異動を考えるときに、部署のパフォーマンスを上げるための異動なのか、長期を見据えた育成含みの異動なのかで、目的と成果が異なってくる。

CHROに必要なのは、中長期的に考えたときに必要な「組織の再現性」や「変革リーダーの輩出」について経営者に問題提起し、議論できる視座ではないだろうか。

連載 : 人事2.0 ──HRが作る会社のデザイン
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文=堀尾司

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