アリババは今年4月に95億ドルでフードデリバリーの「ウーラマ(餓了麼、Ele.me)」を買収し、競合のテンセント傘下の「美団点評」と市場の覇権を争っている。
ウーラマCEOのWang Lei(王磊)はフォーブスの取材に対し、「中国のフードデリバリー市場は300億ドル(約3.3兆円)規模とされている。ウーラマは今後、提携レストラン数を増加させ、エクスプレスサービスの拡充などの施策を通じ、この市場でナンバーワンを目指す」と語った。
Wangによるとアリババは美団点評との戦いに備え「夏の陣(summer war)」という戦略を立てたという。美団点評の市場シェアは調査企業「Trustdata」によると、昨年46.1%に達していた。一方でウーラマのシェアは39.5%だ。
美団点評は香港でIPOの準備を進めており、今後の拡大に向けた資金調達を行なおうとしている。同社はEメールで発表した声明で「当社はこの市場の主導権を握っており、2018年3月末時点のシェアは59.1%に達している」と述べた。
中国のフードデリバリー市場では、激しい値引き合戦で顧客の奪い合いが続いており、ウーラマも美団点評も膨大な赤字を垂れ流している状態だ。しかし、コンサルティング企業「iiMedia」のZhang Yiは、「少なくとも短期的にはウーラマの値引き戦略は成功を収め、美団点評の顧客を奪うだろう」と述べた。
「ブルームバーグ」の報道によると、ウーラマは今後さらに20億ドルの資金を個人投資家から調達する計画だという。CEOのWangは「外部からの資金も積極的に受け入れていく」と述べている。
ウーラマの強力な武器となるのがアリババの動画サイト「Youku Tudou(優酷土豆)」との連携だ。Youku Tudouの視聴者はウーラマの割引クーポンを入手できる。また、ウーラマの会員はYouku Tudouの有料動画の一部を無料で視聴可能になる。
「フードデリバリー市場は我々が、なんとしてでも抑えねばならない市場だ。今後もこの部分に投資を続け、予算に制限は設けない」と Wangは話した。
将来的にはEコマースの宅配も開始
一方でアリババにとってウーラマは、同社のモバイル決済アリペイの拡大を促進する上でも重要だ。それに対し、美団点評は独自のモバイル決済「Meituan Zhifu」を主要な決済ツールとして用いている。
Wangによるとウーラマは、アリババが目指す中国の小売業界の根本的な革新を支援していくという。ジャック・マーはリアル店舗とEコマースの双方で、30分以内の宅配の実現を目指しており、ウーラマが抱える300万人の配達人員がここで役立つことになる。
「将来的にはウーラマのロジスティクスを、多様なショッピングサイトに開放していく。Eコマースで買った商品が当日に、場合によっては1時間以内に受け取れるケースも出てくる」とWangは話した。