ビジネス

2018.07.30

働く人の生産性は「美しい姿勢と早歩き」で変わるのか?

「腰痛撲滅プロジェクト」の様子

2015年の秋、「健康経営」を始めてもっとも驚いたのは、腰痛に悩む人の多さでした。

DeNAで働く人の健康をサポートするにあたり、まずは身近な社員の観察を始めましが、そこでわかってきたのは、首や肩、背中、腰を痛めるような無理な姿勢で、1日6時間以上も座ったまま働き続けている人が多数いたということです。

姿勢の悪さを自覚している人たちを中心にヒアリングを行なったところ、ほとんどの人が腰痛や肩こりを感じていたことが印象的でした。とくに、エンジニアは1年を通して座業が中心となるため、人によっては腰が痛いのを我慢して座り続けている人や、痛み止めの薬を飲んで仕事をしている人もいました。

腰痛を自覚している人のなかには、痛みのために会社を休むケースまで見受けられました。にもかかわらず、「こうすれば腰痛から解放される」という対処法を知っている人はほとんどおらず、「職業病だから仕方ない」と諦めている人が大半という状況でした。これは、どうにかしなくてはいけないと思ったものです。

腰痛撲滅プロジェクトを開始

そこで、腰痛に関して徹底的に調べました。というのも、私自身、腰痛を経験したことがなく、基礎知識がゼロ。まずは腰痛に関する本を片っ端から読んで、どんな痛みであるのかを学ぶ必要があったからです。

多くの本から学びましたが、とくに出色だったのが、東京大学医学部附属病院の松平浩特任教授が発信されている情報でした。明快な言葉でわかりやすい解説は、腰痛理解の大きな助けになりました。


東京大学医学部附属病院の松平浩特任教授

なかでも印象に残ったのは、「姿勢よく早歩きをする」ことの大切さと、「体の痛みとメンタル面のつながり」に関する研究についてです。

後日、松平先生の講演を聴くことで、「最も就労に影響している症状は、『腰痛・首の痛み』である」という論文(Wada K, et al. Ind Health 51, 2013)の存在も知ることができました。腰痛はIT企業だけの悩みではなく、働く人にとっての健康課題としても一般的なものだったのです。

DeNAで働く人の腰痛を軽減したり、なくしたりすることができれば、その方法は社会的にも価値のあるものではないか。そう考えて、「腰痛撲滅プロジェクト」を始めました。
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文=平井孝幸

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