物理的な距離はもちろんのこと、心理的・社会的な距離の克服は大きな課題だ。感情的なつながりがなければ、遠隔勤務の従業員は自分が忘れられている、誤解されている、信用されていないと感じ、混乱してしまうかもしれない。こうした感情は全て、従業員エンゲージメントと生産性を損なう原因となる。
遠隔勤務の従業員との絆は、そこまで重要ではないと思われるかもしれない。遠隔勤務者は、オフィス勤務者よりも満足感を感じていることが多いからだ。
私が創業したコンサルティング企業「リーダーシップIQ(Leadership IQ)」が3478人の会社員を対象に実施したインターネット調査「あなたの性格は、遠隔勤務とオフィス勤務のどちらに向いている?」では、オフィス勤務者のうち仕事にとても満足していると答えたのはたったの24%だった。
一方、仕事にとても満足だと答えた割合は、モバイル勤務者の間では38%、テレコミューティング勤務者の中ではなんと45%に上った。しかし、遠隔勤務者の方が満足度は高くても、上司や会社とのつながりを感じているとは限らない。
遠隔勤務者は、社内の政治的駆け引きや長時間の通勤に巻き込まれることなく自宅で勤務できることなどのメリットには満足かもしれない。しかし、遠隔勤務者が長い間、その企業で働き続けることを希望しているとは限らない。
残念ながら、つながりを構築するのに最も効果的な対面でのコミュニケーションは、遠隔勤務では実践できないことが多い。絆を構築・維持するには、他のコミュニケーション方法が必要だ。しかし、全てのコミュニケーションが同じ効果を発揮するわけではない。中には、既に存在する社会的距離感を悪化させてしまうものさえある。
電子メールの問題点
例えば電子メールは、遠隔勤務者と連絡を取る際に最もよく使用される連絡方法だが、最も効果が弱い連絡手段だ。時差のある地域で働く人との連絡には特に便利だが、読み手が誤解したり、書き手にそんな意図はないのに失礼だと感じたりすることも多い。
効果的なコミュニケーションには、言葉以上のものが必要だ。内容だけでなく、伝え方が重要なのだ。身ぶりや口調、顔の表情など、あらゆる要素によりコミュニケーションに深みが加わり、相手が正しく解釈してくれる可能性が高まる。電子メールでは、こうした要素が何一つとして伝わらない。そのため、メッセージが誤解されるリスクが非常に高い。
過去の調査では、近しい仲にある友人でさえ、電子メールに込められた感情をきちんと理解できないことがあるとの結果が示されている。従業員となれば、書き手の意図の解釈に苦慮するのはなおさらだ。