ビジネス

2018.07.23

退任するフィアットCEOが「後に残すもの」

セルジオ・マルキオンネ(Photo by Pier Marco Tacca/Getty Images)

欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のセルジオ・マルキオンネ最高経営責任者(CEO)がこれほど早い時期に、それもこれほど唐突に退任することになるとは、誰も思っていなかった。他の誰よりもそう考えているのは、マルキオンネ本人だろう。

FCAは7月21日、マルキオンネCEOが病気のため退任すると発表した。後任には傘下の「ジープ」ブランドを率いるマイク・マンリーが就任する。

マルキオンネの退任後もFCAがこれまでの成功を維持できるかどうかについては、すでにさまざまな憶測が飛び交っていた。マルキオンネは同日、FCAの向こう5年間の事業計画の概要について説明した後、お気に入りのジャズ歌手、ボビー・マクファーリンを引き合いに出し、「即興性」の重要さについて語った。

「手続きやプロセスが重要であることは十分に理解している。だが、FCAに必要なのは現在も未来も"音楽" だ。われわれのやり方は(他社とは)異なったものになるだろう。(重要なのは)即興性と機敏さ、開かれた議論だ。そして、勇敢であること、謙虚さから生まれたものであることだ」

「なぜわれわれが(他社とは)異なるのか…それは、われわれがサバイバー(生存者)だからだ。FCAの起源は、過去10〜15年間に最も困難な状況に直面したフィアットとクライスラーの人々にある。彼らは仕事を失い、威信を失う脅威に直面した」

アナリストらが、マルキオンネが後継者に"脚本"や何らかの指示書を残すことになるのかと尋ねると、マルキオンネは次のように答えた。
「…脚本も指示書もない。FCAには、逆境と"楽譜"なしで動く人たちから生まれたリーダーと従業員たちの文化がある」

マルキオンネが「ジープ」ブランドを驚異的な成長に導いた英国出身のマンリーを後継者に選んだのは、当然のことだった。だが、マンリーはこれほど早くバトンを受け取ることになるとは思っていなかっただろう。FCAの広報担当者によれば、7月25日に行う今年第2四半期の投資家向け決算説明会は、マンリーが主導するという。
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編集=木内涼子

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