「前振り」のひと工夫で、相手はあなたの話を聞くはずだ

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大切な話なのに、なかなか相手に聞いてもらえない。そんな体験をしたことはないだろうか? どうしたら聞き手の興味を引きつけ、そのまま、その状態を維持していくことができるのか。実は、本題に入る前に、ちょっとした「前振り」を入れることで、聞き手の気持ちをコントロールできるテクニックがある。

たとえば、長々とした条項の確認や説明書の読み上げのときなどは、これから話すことは、「長いのか、複雑なのか、細かいのか」を最初に宣言してしまう。長いならば「リラックスして聴いてほしい」、複雑なものは「わからなくなったらその時点で質問をしてほしい」、細かなものに至っては「詳細は聞き流しても問題はない」といったようなエクスキューズを、聞き手に伝えておくのだ。

そもそも、話を退屈に感じるのは、話す側にとってはわかっている話の全容が、聞く側にとってはそれが皆目見えないからだ。なので、どんな話になるのか、どのように聞いて欲しいのかを、あらかじめ説明しておくことで、聞き手の退屈を和らげることができる。

「サスペンド」を仕掛ける

例えば、新規プロジェクトなどの提案の場合。ここでは、話を聞いた後で「相手がプロジェクトに対してその気になる」ということが重要となる。実は、成功に導くための秘策がある。

まず、話の冒頭にサスペンド(保留)を仕掛けるのだ。サスペンドとは「サスペンス」の語源。つまり、冒頭で問いを投げかれられると、それが解決するまで宙ぶらりになった状態となり、とても気になるというわけだ。

この場合、仮に、プロジェクトに「〇〇作戦」のような仮のタイトルをつけておく。あまりキマりすぎていないもののほうがよい。そして、「実はまだ、もうすこし良いものを考え中です」と言って、「最後にもっとふさわしいタイトルが思いついたらお話しください」と振っておくのだ。

もし、聞き手から新しいタイトルが出て、自分のアイディアがプロジェクトに採用されたなら、ないがしろにはしにくいものだ。そこで、新規プロジェクト実現の可能性は広がる。

ちなみに、私はこのサスペンドで「してやられた」という経験がある。サスペンスの巨匠、映画監督のアルフレッド・ヒッチッコックが、面白くない脚本だと思いながら撮り始めてしまった作品にこれを使った。最初に主人公が登場するシーンで、テーブルの引き出しに拳銃をしまう場面を、新たに挿入したのだ。私は、それがいつ使われるのか、ラストまでドキドキしていたのだが、とうとうその拳銃は使われなかった。

テーブルに萎れた花を

では、話が健康問題や安全運転の説明など、聞き手が何度も聞き慣れた話題の場合はどうだろう。ともすれば、人はすでに聞いたことがある内容は、聞き流してしまいがたちだ。

こういったときは、聞き手に恐怖を植え付け、危機感を煽る方法もある。たとえば「健康のために水分は充分とりましょう」と言うよりは、水分が足らずに萎れた植木鉢の花をテーブルの上に置いておくという刺激的な方法もある。もっとも、不快な刺激のあとは、きちんと救いを与えて閉めるのがマナーだろう。植木鉢にはその場で水をやるべきだ。

ということで、「前振り」をひとつ工夫することで、相手にきちんと話を聞いてもらえる可能性は高まるのだ。ぜひ、実際の会話のなかでも実践して欲しい。あなたの話は、もっと相手にインパクトを与えて届くはずだ。

文=中井信之

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