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2018.07.23

定員割れの大学がとるべき施策とは?


大学はもっとソフトパワー人材の養成に意を用いてほしい。アニメの世界でみると、製作と制作のそれぞれプロデューサーはいても、両方の分野に通じ国際的に通じる人材は非常に少ないという。ここを大学が受け持つのである。エンタメ高度人材の養成は、「黄昏の大学」に一筋の光明を与えてくれると思う。ホテルマネジメントにおけるコーネル大学のような存在を目指したらどうか。

専門職大学や専門学校は、より実践的なプロ、エンタメの職人養成に期待を持てる。とくに少子高齢化と過疎の脅威に晒される地方では、雇用創出にも繋げていけるのではないか。その際には、すでに実績のある経理や電気通信などの専門学校とのコラボも有益だと思う。

古いタイプの大学人には、いまだ実学軽視の風潮がある。だが、学問のための学問、では困る。実学も修めたうえでの形而上学的研究ならわかるが、日本経済新聞を読んでいないことを自慢するような経済学部教授が存在できる現状には違和感を覚える。

新渡戸稲造といえば『武士道』。その博識は多言を要さないが、教育者としての適性も旧制第一高等学校校長時代にいかんなく発揮された。彼は専門研究にいそしむ傍らで、『随想録』のような「通俗書」も多くものにしていた。学者たちはそれを酷評し、吉野作造も諌めたようだが、新渡戸は意に介さなかったという。

新渡戸は、学校が活社会で役に立たず、学校と俗世間を接近させるべきだ、と言い慣らしていたという。

「学俗の両者を接近せしむるは、一国の殖産上に関係すること甚だ大」

噛みしめたい100年前の言葉である。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

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