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川村雄介の飛耳長目

稲妻が走り、雨がぱらつく沖縄であった。だが、雷鳴をかき消すような若い女性たちの歓声が止まなかった。那覇の国際通りにほぼ隣接する好立地の真新しいビルは、今春開校したばかりのエンターテインメントの専門学校である。ときあたかも、同地で開催中の国際映画祭でレッドカーペットを練り歩くべく、著名芸能人が次々に控室のある同校に降り立っていたのである。

この専門学校は、クリエイティブ学科とパフォーミングアーツ学科からなり、アニメーターやCGデザイナー、俳優、ダンサー、プロデューサー、音響技術者などを育成するそうだ。「エンタメ・アイランド宣言」をしている沖縄に相応しいが、なにより今後の日本を担っていくべきソフト産業の人材養成の意義が大きい。

日本から大量生産型の製造業中心の時代が去って久しい。経済社会の発展段階を中抜きするように急成長している中国やASEAN諸国と競争を続けていくのは難しい。バイオや医療、ICT、海洋・宇宙などの先端的分野に磨きをかけなければならないが、欧米のみならず中国の勢いも気になる昨今である。

そこで注力すべき日本のお家芸分野がいわゆるソフト産業である。おもてなしの心と長い歴史に裏打ちされた独特の文化を、戦略的に産業化してマネタイズしなければならない。たとえば、まだまだ伸び代のある日本のコンテンツ産業規模は12兆円程度と推計されているが、輸出比率は3%に過ぎない。コンテンツ大国のアメリカでは17%が輸出されている。

ここに目を付け国家戦略として推進しているものがクールジャパンである。長期的な観点から、日本のソフトパワーを拡充して世界で戦おうというわけだ。古今東西の歴史は、ソフトの文化戦略が結局はハードの軍事戦略を凌ぐものであることを証明している。短期間で損しているの、実績がないの、と口を尖らす向きは、事の本質を見ていないのではないか。

大切なのはここでも人材である。二つの側面があると思う。高度人材と専門人材とである。前者は大学、大学院が、後者は専門学校や新制度の専門職大学に背負っていってもらいたい。

現在の日本の大学は多すぎる。4年制が全国に800校弱。日本中の市の数が790ほどなので、各市に一つの大学が存在することになる。大学関係者にはさまざまな弁解があるのだろうが、私立大学の定員充足率は6割で、赤字の大学が37%もある。その約半数が3期連続赤字だ。「大学業」は構造不況分野である。事情は地方ほど深刻だ。

一部の大学は時代のニーズを敏感に嗅ぎ取り、魅力的な学部やコースを新設して健闘しているが、大半の大学は看板のみ架け替えて実態は前世紀型である。ハイブリッド車のような名称でも実は木炭自動車なのだ。

文=川村雄介

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