ビジネス

2018.07.25

スタートアップ界最強の女性は、いかに「3足のわらじ」を履きこなす?


奥本:アンさんは8%しかいない女性投資家のお一人です。また、17年の女性創業者への投資額はベンチャー投資総額のたった2%という厳しい状況もあります。そこには、やはり、ジェンダーバイアスのようなものがあるのでしょうか?

アン:投資の決定には女性の意見が非常に重要になっているので、ジェンダーバイアスという状況は改善されつつあると思います。

パートナー会議では、男性は意見を求められると「妻や娘に聞いてみる」と言うこともあるほど、女性の意見はパワフルなものになっているからです。アメリカの消費は50%以上女性が行っていることを考えると、当然といえます。しかし、妻や娘は投資判断の意思決定者ではありません。
 
早く決断しないとリターンが良くないのは明らかです。多くのVCも女性パートナーを起用する動きを見せ始めています。そのため、女性パートナーが不在の企業は、多様化を進めなければとプレッシャーを感じているようです。

奥本:それでも、女性が認められるのは、なかなか難しいことですよね。

アン:これまで成功してきた女性は、男性と同等か、男性を凌ぐような仕事をしたために評価されたのだと思います。しかし、私自身は、男性、女性という視点からは評価していません。重要なのは、成功に到達できるようなストーリーが作ることだからです。これまで男性はそんなストーリーを作ってきましたが、女性や有色人種はこれから生み出していかなければならないと思います。特に、システムが女性や有色人種にはフェアーとは言えない以上、私たちはみなを凌ぐような仕事をする必要があるんです。

奥本:確かに、社会には、女性に対する無意識のバイアスがあります。アンさんは、それにどう対処されているんでしょうか?

アン:私は“サプライズ・アタック”するんです。よく物静かだという第一印象を人に与えてしまうため、会議では、逆に、他の人の話を邪魔するくらいどんどん発言して驚かせるようにしているんです。男性が多い会議では特にそうしています。そのため、第一印象とは異なる私のアグレッシブさに驚かされたとよく言われます(笑)。

奥本:アンさんは投資の最前線で活躍されながら博士課程の勉強もし、また、母として二児のお世話もしてこられました。3足の草鞋を履きこなす生活はご苦労も多かったのではないでしょうか?

アン:フラッドゲイトをスタートして間もなく長男を宿し、長女の世話もしていたので、毎朝4時に起きて博士号の勉強をしてから仕事に行くという日々を送っていました。大変でしたが、両親や夫のサポートを得られたのはラッキーだったと思います。夫は非常に忙しいエグゼクティブなんですが、向いに住んでいる方から「ご主人がいつも皿を洗っていますね」と言われるほど半分以上、家事を助けてくれるんです。
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構成=飯塚真紀子

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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