ビジネス

2018.07.24

掲載求人数の価値はなくなる 新時代の「採用メディア」のあり方とは?

HERP代表の庄田一郎

終身雇用が崩壊した現代。転職は当たり前になりはどんどん増えていっている。エージェント経由やSNS経由による採用から、リファラル採用など、多様な採用形態は企業・求職者の細やかなニーズを満たすが、一方で人事は多様なサービスに辟易してしまうのも事実だ。

各求人メディア媒体で求人募集を作成せねばならず、応募者とのメッセージのやり取りは各媒体で行う。当然、連絡し忘れるなどの抜け漏れも出てきてしまう──。

そんな人事担当者を助けるサービスが「HERP」だ。同サービスはさまざまな求人メディアに関する情報をへの投稿やメッセージの返信を一元管理できるAIリクルーティングプラットフォーム。煩雑な事務作業を自動化・効率化することで人事担当者の負担が減る。

さらにHERP社は日本の採用業界を改善すべく「Open Recruiting API構想」を掲げ、メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明やエウレカ共同創業者の赤坂優などのHERP PARTNERと協力。HR業界における情報のオープン化を推進している。

なぜ、いま採用情報のオープン化が必要なのか。これから日本の採用現場はどうなるのか。今回、求人掲載企業の持つべきデータの共有に同意し、新しい求人メディアと掲載企業の形を作り出そうと歩を進めている、HERP代表の庄田一郎、「Find Job!」を運営するミクシィ・リクルートメント代表取締役社長の鈴木貴史、人材紹介に特化した「SCOUTER」を運営するSCOUTER代表取締役の中嶋汰朗の対談を、前後編の2回にわたってお届けする。

ユーザーがあらゆる求人情報を一覧できる世界

庄田:今日はよろしくお願いします。HERPは各種メディアからエントリーのあった候補者情報を自動で集約・管理するサービス。現在のHR領域は作業の大半を事務作業が占めているため、この部分を自動化・効率化してもっと重要な仕事に時間を使えるようにしたかったんです。

なぜ、こうした事業を行なっているのか。少しだけ説明すると、求人メディアには100年近い歴史があります。もともとは新聞や雑誌などの紙媒体に広告を載せるのが当たり前でした。そこから登場したのが『フロムエー』や『とらばーゆ』などの求人メディアで、2000年代以降に増えたのがウェブ媒体です。

ここまでの100年に共通するのは、媒体を持つ人材会社が、広告主・候補者を集客することを大きな目的として進化してきたこと。つまり、利用者ではなく、媒体を持っている企業が主体となり業界が発展していったわけです。。

しかし、個人の情報発信が当たり前になり、SNSを使った採用も増えてきた近年はこの状況も変わりつつあります。あらゆる企業・個人が平等に情報を発信できるのだから、採用企業主体の新たなメディアの使い方が模索されるべき。そこで企業の人事担当者をサポートするHERPをはじめました。

これからは、候補者の情報や、選考結果など、これまで人材会社がもっていた情報がもっと企業にフィードバックされるようにして、企業と人材のより良いマッチングを提供できればと思っています。こうした活動を通じて、人材会社と採用企業、それから求職者のパワーバランスを平準化するのが最終的な目標ですね。


ミクシィ・リクルートメント代表取締役社長 鈴木貴史

鈴木:僕は庄田さんがこの構想を発表してすぐに協力したいと連絡しました。ミクシィでも常々、会社を超えた情報共有の必要性を感じていたからです。

求人メディア保有企業として、メディアの情報のオープン化が行き着く先は、求職者も採用企業側もあらゆるメディアに載っている情報を一覧できる状態でしょう。もちろんこれにはデメリットもあって、例えば採用企業側が媒体選定の際に重視する「エンジニア成約率○○%!」などの常に変動する情報が、古いデータのままで一人歩きしてしまう恐れがある。けれど、これは本質的な意味でネット求人メディアを転換するチャンスだと思っています。

あらゆる転職サイトの情報を一覧できれば、求職者も採用企業側も選択肢は大きく広がります。それぞれの転職サイトで求人や候補者情報が独立していると、求職者も採用企業側もいろいろなサイトに登録しないといけない。この手間がなくなるのはとても大きいことです。

これは求人メディアが共同して行っていく活動ではありますが、庄田さんの構想であるまずは企業が持つべき候補者情報を一元管理するという試みも、非常にチャレンジングな試みだと思っています。なので、いま弊社にできることとして、企業が持つべき情報に関しては共有を進めたいと考えています。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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