ユーザーの使い勝手が良くなり、オーナーの空地運用手段やその収益も改善する。そして、プラットフォームを用意したソフトバンクは、データ解析を提供した「コンサルティングフィー」で儲ける。そう聞くと、WIN×WIN×WINのようにも思えるのだが、個人的にはサービス普及の障害がいくつかでてくるのではないかと考えている。
ひとつは、駐車料金の価格競争の激化、また駐車料金低下によるオーナーの反発だ。シェアサービスで駐車場が増え、データ解析で最適な価格が算出されるようになれば、競争力のある駐車場が生き残るのは必至となる。旧来の値段が固定された駐車場、もしくは根拠不明なまま割高な駐車場には人が集まらなくなり、結果的に、駐車料金が全体的に下がっていくだろう。
駐車場オーナーだけでなく、自宅に駐車場を持った個人なども参入してくれば、価格低下はさらに加速。空地にシェアサービスを導入した人々も、いずれ価格競争に巻き込まれていくはずである。
デジタル化はサービスやコンテンツの価格低下を招くことが多いが、土地もしくは不動産という資産と結びついた駐車場サービスの場合、オーナーたちが運用利益の低下を許せるかという点は、普及を考えた際にひとつのポイントになるはずである。もちろん、価格が安定してオーナーに多くの収益が還元されるという可能性もあるが、個人的にはプラットフォームを用意したソフトバンクの一人勝ちという構図の方が説得力のある未来像のように思える。
普及の障害となりうるもうひとつの要素は「決済」だ。より正確に言うのであれば、決済と紐づいたユーザーの「習慣」である。おそらく、BLUUではスマートフォンや関連アプリを通じた決済が想定されているはずだが、現金を使っていたユーザーが、駐車場料金の支払いのためにデジタルマネーを使用する、もしくは端末にチャージしとくという習慣に身を慣れさせるまでには少なくない時間を要するはずである。
なお、ソフトバンクは8月末からベータ版トライアルを開始。今年10月下旬から本格的にサービスを開始するとしている。日本におけるシェアパーキングビジネスの試金石となる試みなだけに、その成否に注目したい。