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2018.07.23

組織が決して実行しないセクハラ防止策

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最も大きなメリットは、現状調査の結果から、ハラスメント対策の有効性を測定することができることだ。各組織は数十年にわたりセクハラ防止研修を実施してきたが、最近の調査では、こうした従来型研修の大半にはハラスメント削減効果がほぼないという結果が出ている。

悲しいことに、セクハラ防止研修の効果の有無について誰も把握できていない状況が、長年にわたり続いていたのだ。現状調査からのフィードバックを利用すれば、セクハラ対策には何が有効で、何が有効でないかを明確にできる。

NASEMは、現状調査の結果を公表することで、組織がセクハラ問題に取り組んでいることを公に示すポジティブな効果もあるとしている。組織にとってウィンウィンにも思える提案だが、残念ながら多くの組織はリスクが高すぎると判断するだろう。

組織が現状調査を実施しない理由

残念ながら、ハラスメント防止につながる現状調査は同時に、組織に対して大きな法的リスクとPR上のリスクを負わせることにもつながる。例えば、調査結果から、組織内にハラスメントが横行していること、あるいは、中程度のハラスメントが存在することが示された場合でさえも、調査結果がメディアに流出すれば組織イメージの大幅な悪化につながる可能性がある。

さらには、調査の結果、従業員が一定のハラスメント問題に直面していることを把握したものの、その問題を解消できなければ、組織には法的責任が生じることになる。現状調査により、組織が現在実施しているセクハラ研修が効果的でないと判明した場合、その組織はハラスメントの防止や是正に向けた適切な措置を講じていないと判断される可能性がある。つまり、組織が法を遵守していないとみなされるのだ。

現状調査は有用なツールとなり得るものだが、イメージ悪化の可能性や法的責任追及の問題を考えると、この調査を通じて職場の状況を明らかにすることは、多くの組織にとってリスクが高すぎる。しかし現状を調査しない限り、自組織内の問題の全体像を把握することはできない。組織にとってそれはウィンウィンでなく、誰も勝利しない状況だ。

翻訳・編集=遠藤宗生

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