変わる「実店舗」市場
従来型の実店舗の小売店は急速に、電子商取引ビジネスを拡大している。だが、一方では実店舗を活用して利益につなげるための最善の方法や、アマゾンで買うより実店舗に足を運ぶべきだと消費者を納得させられるだけの理由の示し方について、いまだ模索を続けている。
それでも、これらは必ずしも小売業の終わりを意味するものではない。消費者の行動の変化が、従来の実店舗型の小売業者やショッピングセンターの開発業者に改革を促し、新たな需要に応えることを求めているというだけのことだ。
業界を最も大きく“破壊”してきたアマゾンが高級スーパーチェーンのホールフーズを買収し、レジのない無人コンビニ「アマゾンゴー」を開業したことが、小売業における実店舗の重要性を証明している。同様に実店舗を開業する電子商取引業者は、他にも幾つもある。REISによれば、ショッピングセンターの店舗スペースの平均賃料は実際のところ、上昇している。
新たな需要に対応
ショッピングモールの開発・運営業者が新たな需要に応えようとする中で、テナントの顔ぶれなどにも変化が出始めている。
例えば、ラスベガスの「ファッションショーモール」やシカゴの「ウォータータワープレイス」など多数の商業施設を所有するGGPのサンディープ・マスラニ最高経営責任者(CEO)は今年2月、入居するテナントは従来50%が衣料品の販売店だったものの、その割合が40%に低下していることを明らかにした。年内に35%にまで下がる可能性もあるとの見方だ。
また、ペンシルベニア州にある「キング オブ プルシャ」を所有するサイモン・プロパティ・グループは5月、所有する複数の商業用不動産を「体験を重視した未来型の」施設にするため、40億ドル以上を投資する計画を明らかにした。
同社のデビッド・サイモン会長兼CEOは、「小売業の世界は変化し続けている」と指摘する。そして、「われわれは新しいもの、今とその先に焦点を絞っている」という。
実店舗は決して、死んではいない。その姿を変化させているにすぎないのだ。