アマゾンはスマートホーム分野で特権的なポジションを獲得している。AIスピーカー「エコー」の売上台数は「グーグルホーム」を下回っているものの、スマートホーム製品を活用する上で、アマゾンのアレクサのスキルは最大の人気を誇っている。スキルの数は現在、3万件以上に達している。
アマゾンはアレクサ経由で得たデータで、スマートホーム市場の動向を把握し、どのカテゴリに投資すべきかを完全に把握している。同社が今後この分野でさらなる投資を進めるのは明らかだ。
その一方、アップルは同社のスマートホーム規格「HomeKit」の対応製品リストから「スマートドアベル」のカテゴリを削除していたことが明らかになった。アップルは自社で立ち上げた規格のHomeKitプラットフォームに、外部企業を呼び寄せるかたちで、スマートホーム市場に参入した。
スマートドアベル部門には「August Doorbell Cam」が2016年に参入を宣言し、アップルのサイト上では間もなくこの製品の販売が開始されるとアナウンスされていた。
しかし、その製品ページが跡形も無く消えてしまったのだ──。この件に関しニュースサイト「9to5Mac」のBenjamin Mayoは次のように述べている。「HomeKitのドアベルで起きた事態は、アップルの宣言が空約束だったことを示している。ドアベルのカテゴリはHomeKitが最も弱い分野だった」
これは同社の失態の一例に過ぎないのかもしれないが、アップルのスマートホームへの控えめな姿勢は奇妙にも思える。アップルはテック業界で最もリッチな企業であり、2700億ドル(約3兆円)ものキャッシュを抱えているのだ。
アップルはこの分野で大規模な買収を行なう意志を持たないのかもしれないが、HomeKitはスマートホーム分野で最も優れたソリューションの一つといえるだろう。同社は現状よりもクリエイティブな方向にプラットフォームを進化させ、HomeKit対応製品の売上を伸ばす戦略を練っているのかもしれない。