あまり知られていないこのスタートアップは先ごろ、オーストラリアのソフトウェア企業、アトラシアンの共同創業者であるマイク・キャノンブルックス最高経営責任者(CEO)が主導したシリーズBラウンドで、およそ5億ドル(約564億円)を調達した。
米カリフォルニア州サンマテオ郡のフォスターシティーに拠点を置くズークスは、オーストラリア出身のアーティストで起業家のティム・ケントリークレイのほか、コンピュータ科学者のジェシー・レビンソンが率いる。今回のラウンドにより、同社が調達した資金は総額およそ8億ドルに達した。ケントリークレイによれば、同社の評価額は今回のラウンドで、32億ドルに引き上げられている。
ほぼ「唯一の」企業
ズークスは2020年から、独自ブランドによるサービスの開始を目指している。ケントリークレイは、「売上高も製品も顧客もまだない企業がこれだけの資本を調達するというのは、ほぼ前例のないことだ」として、「われわれのチームの質と掲げるビジョン、これまでの成果を証明するものだ」と語った。
自動運転テクノロジーを開発するウェイモ(アルファベット)とクルーズ(ゼネラルモーターズ)、そしてその他の自動車メーカーは基本的に、既存の車両の設計を修整することによって自動運転に必要なセンサーや演算能力を組み込もうとしている。完全な「ロボットカー」をいちから設計しているのは、恐らくズークスだけだ。
車両の最終的なデザインは公開されていないが、ズークスはステアリングやブレーキなどのない広々とした車内を実現した、乗員の快適性を重視した自動運転車を目指している。4人乗りの車内は前後の座席が向かい合うように設置され、車体は前後に凹凸(ボンネットやトランクの部分)がない形状だ。米国で提出された特許出願書類によれば、巨大なレゴブロックを4つ組み合わせたような形になると見られる。
ズークスの取締役の一人でもあり、ケントリークレイと同じオーストラリア出身で、同様にテクノロジー分野で起業したキャノンブルックス、その出資する同国のベンチャーキャピタル「ブラックバード・ベンチャーズ」は、過去にもズークスに出資している。
今回のラウンドでキャノンブルックスが出資した金額は、個人としては過去最高となる。キャノンブルックスはフォーブスに対し、投資額がこれまでの最高額の5倍に当たることを明らかにするとともに、「…間違いなく、とてつもない金額(の投資)だ」「彼らが目指すことに対する私の信頼度を測るものだと思ってほしい」と語った。
ズークスにはそのほか、DFJやラックス・キャピタルといったシリコンバレーのベンチャーキャピタル、映画制作者で富豪のトーマス・タルなどが投資している。今後の資金調達の予定については、現在のところ不明。
ズークスは4月に本社を移転したばかりだ。2015年には5人だった従業員は、現在は500人以上にまで増えている。さらに、毎週7人前後を新たに採用しているという。
ケントリークレイは自社の目標達成について、「確かに、時間的には厳しい」と認める一方、「社内全体が目標達成に向かって、休むことなく作業を進めている」として、あくまで2020年の商業化を目指す考えを示した。